伊東孝紳・ホンダ社長--CO2削減目標は厳しいが是が非でも克服していく
私も(スポーツカー)NSXの開発をしていた頃は、とにかく人より優れたもの、人と違ったものをと、かなりそっちに重点を置いた精神構造で動いていたけれど(笑)。
--本田技術研究所社長との兼任も続けていますが、その効果は。
リーマンショックで社内がドタバタしていた昨秋から年末にかけて、僕はたまたま経営企画会議の議長で、福井から「この事態をどう収拾するかまとめろ」と言われていた。
生産計画や大型投資を練り直す過程で、これは開発の方向性が大きく絡んでくると思った。当面は投資案件の凍結でいいが、本質的には事業の大きな変更を踏まえて、開発がもっと大きく先に舵を切らないと、次に浮上するときに危ない。そこで、研究所に強く接触し始めた。その延長線上で、社長になるのなら兼任させてもらいたいと言ったんです。
--研究所の反応は。
嫌がられた。私も研究所には長くいたんだけど、出た人間には冷たいからね(笑)。研究所から見ればホンダ本社なんてろくな考えもないし志も低い奴ら。俺たちは二歩も三歩も先を走っているというプライドと実行力を持っている。好きにやってくれるほうが理想。できるだけ早く(兼任を解いて)、僕はこちらであぐらをかいていたい(笑)。
--技術といえば、7月に日米でエアバック破裂に関するリコール(シビック、アコードなど計44万台)が発生しましたね。
すごい規模です。ものすごく深刻に受け止めている。社内で叱った。関連するトップの役員が全員そろったんで、みんな集まれって言って、いいかげんにしろと。ちょっと動き方が遅いし、とらえ方が甘い。ホンダが米国で培ってきたブランド、お客さんの信頼を裏切る可能性を秘めている。安全技術開発をずっとやってきた第一人者を担当に指名して、全権委任したところです。