「夢があっても一生実現しない人」の最大理由 僕が「サードドア」で本当に伝えたかったこと
――日本も欧米も経済成長が終わり、苦しみあえぐ時代です。その中でバナヤンさんの人生の選択は、現代的な生き方を示唆しているようにも見えます。
本を書き始めた18歳の頃は、リーマンショックなどがあって、アメリカが大不況の時期でした。大学を卒業しても就職先があるという保証はない。卒業したらいったいどうなってしまうんだろうという心配事を、周囲のみんなが抱えていました。
本を出版した昨年は、アメリカはたまたま好況の時期でした。でももし不況期だったら、本に対してもっと反響があったのではないかと実は思っています。『サードドア』は、政府や企業がなにかをしてくれるまで待つのではなく、もっと創造的になって、やりたいことは自分から進んでやって行こうというメッセージを込めた本ですから。
僕は、日本の状況にはあまり詳しくはありませんが、過労死するまでプライベートを犠牲にして働く人が多く、問題になっていると聞きました。そこまで従業員を働かせてしまうというのは、いったいどういうことでしょうか。これからはAIが成長を遂げます。そうなると、創造的で人間らしい考えを持った従業員の多い会社こそが、成長し、残ることになるだろうと思います。
実は18歳の頃、グーグルに就職したいと思っていたことがありました。でも、『サードドア』に取りかかってみたら、そっちのほうがあまりに面白くなりました。結果、グーグルやアップルに出向いてスピーチをする身分になれたんです。でも、それも1日で十分だなと感じています。
お金を稼ぎながら、世界をよくすることを考える
――日本では、成功者のもとに集まって情報や人脈を得るというサロンビジネスがあります。アメリカにもそのようなサロンはありますか?
もちろんあります。エコノミッククラブと呼ばれていて、すごく盛況ですね。3段階あって、1番トップがビジネスクラブ。ここは排他的な傾向があります。そして次が商工会議所、そしてその下に若い起業家のクラブがあります。日本では、成功者に心酔して狂信的になる人々がいるようですね。アメリカのエコノミッククラブには、あまりそういう人はいません。
規模の大きなクラブでは、大企業のCEOたちが、お金を稼ぎながらさらに世の中にどのように貢献していけるか、環境をどう維持するかなどを議論しています。お金を稼ぎながら、同時に世界の安定を保つという理念を持つクラブが多いのです。やはり、成長していくことと、持続する社会を考えること、この両方が重要だということです。
――日本では活字離れが深刻化しています。バナヤンさんは、インタビュー前にその人物の本をすべて読み込む様子をつづられていましたが、本というものにはどのような考えをお持ちですか?
僕は活字の本が大好きなんです。ページをめくりながら、自分の手で書き込むことができるし、マーカーを引いたりもできる。そうすることで、本が個人的なものになりますよね。科学的な研究結果にも、デジタルのものよりも、活字を読むほうがより学習効果が高いというデータがあります。
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