斜陽の「銭湯」で大胆に集客する44歳の経営手腕

外の世界で別の仕事にも就き、家業に戻った

小学校時代は、将来、銭湯を継ごうとはまったく思っていなかった。周りの子供たちと同じように、野球選手やプロレスラー、漫画家などに憧れをもったものの、まだまだ漠然としていた。

「銭湯を継ぎたいとは思ってなかったけど、小学生の頃から銭湯の手伝いはしてましたね。掃除とか店番とか……。どこも自営業者の人はそうでしょうけど」

小学校の頃、お風呂で父親の背中を流した。すると入れ墨の入ったオジサンに

「お兄ちゃんえらいなあ。背中流して」

と話しかけられた。自分の父親に

「オジサンの背中も流してやれよ」

と言われたので、タオルに石鹸をつけて流した。

「入れ墨は見慣れてはいたものの、絵が描いてあるのはやっぱり不思議で『これ落ちるの?』って聞いたら、『お兄ちゃんが一生懸命こすったら落ちるよ』って言われて、一生懸命こすりましたね」

もちろん入れ墨はこすっても流れることはない。オジサンは、

「まだまだ子供だなあ。力が足りないんだよ」

と笑った。オジサンの背中は真っ赤になっていて、湯船に入る時にちょっと痛そうにしていた。

「そうやって大人といいコミュニケーションが取れていたと思います。今は入れ墨が入った人を入浴禁止にしているところもあるけど『公衆浴場』なんだから基本的には全員入れなきゃいけないと思ってます。

それに経験では、入れ墨入った人が問題起こしたこととか1回もなかったですしね。入れ墨を入れている人は職人さんが多く、興味深い話を聞かせてくれました」

『バカでも生きてる!!』高校時代

高校は、スポーツが盛んな学校に行った。

ケンカが頻繁にあり“やんちゃ”な校風だったが、それはそれで楽しんでいた。

「高校は同じレベルの人が集まるじゃないですか。『バカでも生きてる!!』と思って楽しかったですね。

高校生になると、親が『ちょっと出かけたい』って言ったら『行ってくれば』って言って、銭湯を全部1人で回してましたね。

お湯を沸かして、店番に立って、鍵を締めて、最後に掃除する。任されたことは、責任持ってやる、ということだけ考えてました」

高校卒業後は就職して、アシスタントカメラマンとして働きはじめた。ただ毎日、暗いスタジオに入り仕事を待つ日々は、活動的な原さんにはじれったく感じた。

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