スバル赤字膨張のおそれ、米航空ベンチャー清算へ 

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スバル赤字膨張のおそれ、米航空ベンチャー清算へ 

自動車不況に苦しむ富士重工業(スバル)に嫌なニュースが飛び込んできた。日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条(チャプター11)下で再建中だった航空機ベンチャーのエクリプス・アビエーションが、清算に相当するチャプター7へ移行する見通しになったのだ。複数の米紙が報じた。

エクリプス社はマイクロソフトの役員を歴任したレイバーン氏が1998年に創業し、ビジネスジェット業界の風雲児と目されてきた。昨年末、米ビッグ3の首脳がビジネスジェットで議会に乗りつけて非難を浴びたが、彼らのは「超」がつく高級機。対してエクリプス機は全長10メートル、航続距離2400キロメートルとジャンボ機の5分の1にも満たない。価格も150万ドル(約1.5億円)と破格だ。

エクリプス機のようなベリーライト・ジェット(VLJ)は10年後に世界で4000機以上が飛ぶともいわれ、成長期待は大きい。ただエ社に限っては「機体の製造コストが販売価格を大きく上回っていた」「運航事業者大手でエクリプス機の大量取引先でもあったデイ・ジェット社の破綻が響いた」(業界関係者)。破綻がリーマンショック後という最悪のタイミングだったこともあり、効果的な再建スキームを描けなかった。

そのエ社に主翼を納入していたのがスバルだ。2006年から累計287機分を出荷。“危険”を察知した昨年9月以降は出荷を停止したが、チャプター11申請で売掛債権26億円と5億円強の出資金は回収難となった。2月頭に発表した09年9~12月期決算では計32億円もの特損を計上。ラリー徹退費用等もあり、通期では190億円の最終赤字となる見通しだ。

ただスバルにはほかにも主翼部品、先行して購入した材料、専用の治具などの棚卸資産が66億円ある。これらはまだ決算処理していない。多くはアルミ部材だが他の用途に転用できるのは一部とみられる。エ社が清算されれば、資産売却などで利益を出さないかぎり、今期の最終赤字は膨らむおそれがある。

スバルにとって航空機は前身の中島飛行機以来の事業であり、企業ブランドを有形無形に高めてもきた。しかし、未曾有の経済危機は自動車産業に続いて航空機産業にも及び、スバルは挟み撃ちにされた格好だ。

高橋 由里 東洋経済 記者

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たかはし ゆり / Yuri Takahashi

早稲田大学政治経済学部卒業後、東洋経済新報社に入社。自動車、航空、医薬品業界などを担当しながら、主に『週刊東洋経済』編集部でさまざまなテーマの特集を作ってきた。2014年~2016年まで『週刊東洋経済』編集長。現在は出版局で書籍の編集を行っている。

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