忍術道場の「武神館」が外国人を惹きつける理由 日本人が知らない「ふるさと」の魅力と聖地

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外国人の門下生に話を聞いてみた。デトロイトから来ていたアメリカ人ビジネスマンのフルトン・ヨースト氏(49歳)は、10代で入門した。

「14歳のときに入門し、車で8時間かけてオハイオ州にあった道場に通いました。1989年に交換留学生で日本に来て、初めて初見先生の稽古に参加しました。本部道場通いは30年になります。今回は5週間滞在し、稽古を重ねます」

フランスから来ている若者は、青山のレストランでアルバイトをして日本語を習得しながら道場通いを続けている。

今年(2019年)1月にはアルゼンチンの軍関係者の団体20数名が本部道場を訪れ、稽古をしていった。2018年にアルゼンチンで行われたG20ブエノスアイレス・サミットの警備最高責任者を務めたのも武神館の門下生だという。

武道、忍術の達人であり、芸術家でもある初見師の人間性、指導、魅力に惹かれて、軍や警察関係者、さらには大学教授、医師、アーティスト、ビジネスマンなど、さまざまな職業の外国人たちが連日、本部道場に足を運ぶ。ご本人いわく「(武神館には武道、忍術の)本質があるから、それを求めてくるんだよ」。

今日もまた、本部道場では外国人門下生たちが稽古を繰り返している。「武神館」──。それは世界に誇る日本の文化遺産である。

世界一の「錦鯉の聖地」・山古志

2004年の新潟県中越地震で錦鯉発祥の地・新潟県山古志村(現・長岡市)は、土砂崩れ、地割れが至る所で発生し、棚池で飼われていた錦鯉も多くが犠牲となった。無事だった錦鯉約2200尾をなんとか救出。およそ200年前から品種改良を繰り返し、大切に育てられてきた地域の宝は人々の必死の活動でかろうじて守られた。

山古志はいまでは「錦鯉の聖地」として世界各国からディーラーや愛好家が集まるようになっている。2017年には農林水産省が、山古志を含む新潟県中越地域(長岡・小千谷)を「社会や環境に適応しながら形づくられてきた伝統的な農林水産業と、それに関わって育まれた文化、景観、生物多様性などが一体となった農林水産業システム」として日本農業遺産に認定した。

山古志地域の錦鯉は「世界最大のガーデンフィッシュ」として世界中で人気となり、錦鯉関連の用語は日本語がそのまま使われているという。そして現在では、世界50カ国以上に輸出されている。中国、韓国、台湾、香港、オーストラリア、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、ポーランド、ギリシャ、イタリア、フランス、ドイツ、イギリス、ノルウェー、マルタ、エジプト、アメリカ、カナダ、アルゼンチン、ペルー、ナイジェリア……。

飼育していた錦鯉を池から取り揚げる10月中旬から11月にかけての「池揚げ」の時期や、その後、長岡市で開かれる品評会には世界各地から関係者や愛好家が集まってくる。この品評会は外国人審査員制度も採用している。表彰式、パーティーは世界各国の国旗が掲げられ、国際色豊かなものとなっている。

山古志地域の復興にまつわる印象的なエピソードがある。新潟県中越地震の際、全国各地の錦鯉生産者がすぐに被災地を訪れ、親鯉の救出、親鯉の貸与といった支援活動を繰り広げ、世界各国の愛好家たちも義援金などを通じてサポート。そうした支援と地域の人々の協働・共助システムで3年後には棚田、棚池を復興し、山古志での暮らしに戻ったというのである。

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