「SNS」がどうしてもやめられない2つの理由

「依存症ビジネス」の巧妙すぎる手口

例えばフェイスブックの利用を正当化しようとするとき、友人一家に赤ちゃんが誕生したのをすぐに知ることができるからなどと言う。これは一方通行の情報伝達であって、(このニュースをみんなが“いいね”と思うのは言うまでもないこととして)フィードバックは必要ない。

つまり、ほとんどのソーシャルメディア・サービスに浸透しているランダムなフィードバックは、サービスに絶対に必要な要素というわけではない。この機能を取り払ったとしても、ユーザーが得るメリットが減少することはないだろう。それでもこの仕組みが広く取り入れられている理由は、ユーザーに画面を見つめ続けさせる効果が絶大だからだ。

「60ミニッツ」で自分のスマートフォンを見せて「こいつはスロットマシンなんです」と発言したとき、トリスタン・ハリスが何より伝えたかったことは、これらがいかに人の心理に強い影響を及ぼすかということだった。

承認されることを渇望している

さて次に、行為依存を悪化させるもう1つの要素、“承認欲求”について考えてみよう。アダム・オルターはこう書いている。「われわれは社会的動物であり、他人からどう思われているかをまったく意識せずにいることはできない」。これが順応行動であることはいうまでもない。

旧石器時代には、部族のほかのメンバーから尊重されているかどうかは重大な関心事だった。それは生死に関わる問題だったからだ。しかし21世紀の今、この本能的衝動は新しいテクノロジーによって乗っ取られ、金銭的利益をもたらす行為依存を生み出すことに利用されている。

ここで、ソーシャルメディアのフィードバック・ボタンについてもう一度考えてみよう。前のセクションで考察したように、これにはランダムなフィードバックを届ける役割もあるが、それに加えてほかのユーザーによる承認という側面も持つ。インスタグラムに投稿したばかりの写真のすぐ下の小さなハートアイコンを大勢が押してくれると、部族から承認をもらったような気分になる──私たちの脳はそれを強く渇望するように進化してきたからだ。

この進化の代償は、当然のことながら、好意的な評価が得られないと苦痛を感じることだ。これは旧石器時代人の脳にとっては一大事であり、この“生死に関わる”情報を抜かりなくチェックしておかなくてはという急き立てるような衝動につながりうる。

この承認欲求の力を侮ってはいけない。フェイスブックの“いいね”ボタン開発チームのプロダクト・マネジャーを務めたリア・パールマン(2009年にこの新機能を発表するブログ記事を執筆した人物)は“いいね”ボタンの負の威力を懸念し、小さな会社の経営者となった現在では、承認欲求を煽るフェイスブックの影響にさらされずにすむよう、ソーシャルメディア担当者を雇って自分のフェイスブックのアカウントを管理してもらっているという。

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