「SNS」がどうしてもやめられない2つの理由 「依存症ビジネス」の巧妙すぎる手口
「新しい通知があってもなくても、どのみちそこまで気分は上がりません」。ソーシャルメディアの通知をチェックすることについて、パールマンはそう言う。「何を期待しているにせよ、それが完全に満たされることはないんです」。
不適切だったり危険だったりする状況(例:自動車の運転中)でも、メールやメッセージを受け取ったらすぐに返信しなくてはと焦る気持ちも、これで説明できる。私たちの旧石器時代人の脳は、新着メールを放置するのは焚き火を囲んでいるとき脇腹をつついて自分の注意を引こうとしている部族の仲間を無視するのと同じ、命を脅かしかねないエチケット違反であると認識するからだ。
自動化されているタグ付けプロセス
テクノロジー業界は、周囲からの承認を求める本能を巧みに利用する腕を磨いてきた。とりわけソーシャルメディアは、友達が今この瞬間にあなたのことをどれだけ気にかけているか(または気にかけていないか)、情報の奔流としてあなたに注ぎこむ技を熟知している。
トリスタン・ハリスは、フェイスブックやスナップチャット、インスタグラムといったサービスで提供されている写真のタグ付け機能を例に挙げた。新しい写真を投稿すると、その写真に写っているほかの人々に“タグ”を追加できる。このプロセスで、タグを付けられた側のユーザーには通知が送られる。
ハリスの説明によると、こういったサービスでは、タグ付けのプロセスはほぼ完全に自動化されている。最新の画像認識アルゴリズムを使って写真に写っている人々の顔を見分けて候補を提示し、クリック1つでタグが付けられるようになっているのだ。例えば“タグを付けますか……?”のような、はい/いいえで簡単に答えられる質問に答えるだけでいい。
クリック1つだから、タグを付ける側に負担らしい負担はない。タグを付けられる側も、このプロセスで送信される通知を受け取り、“誰それが自分のことを考えてくれていた”ことを知って社会的な満足感を得られる。こういった自動タグ付け機能の開発に企業が多額の資金を投じたのは、自社サービスの有用性を向上させることを念頭に置いてのことではなかったとハリスは言う。投資の真の目的は、アプリを通してユーザーに送り届ける、社会的な承認という小粒でも中毒性の高い黄金を増やすことにあった。
ショーン・パーカーは、これらの機能の設計哲学を述べる中でこう言っている。「社会的証明のフィードバック・ループ……いかにも私のようなハッカーが思いつきそうな手法だね。人の心理の弱点を食いものにするわけだから」。
私たちは現状のデジタル・ライフに望んで“登録”したわけではない。今あるこの世界は、テクノロジー業界に出資した一握りの投資家に儲けさせることを最優先に役員会議室で作り上げられたものといっても大げさではないのだ。
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