遺品整理人が見た「汚物・激臭・虫」より辛いもの 亡くなった途端、豹変する人がいる

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――そもそもですが、この仕事に就いたきっかけは何ですか?

小島美羽(こじま みゆ)/1992年生まれ。高校卒業後、郵便局に勤務。その後複数の職業を経て、2014年遺品整理クリーンサービスのToDo-Companyに入社、遺品整理やゴミ屋敷の清掃、孤独死現場の特殊清掃に従事。2016年から独学で現場を再現したミニチュアの制作開始(撮影:尾形文繁)

父の突然死でした。最後の思い出は殴り合いのけんか。父は大酒飲みで、飲んでないときはいい人なんだけど、悪い部分もたくさん経験してきて本当に嫌いでした。

両親が別居したばかりで、母が用事で出向いたとき、倒れている父を偶然発見した。1日遅れていたら孤独死だったんです。生前は嫌いな人でも、やっぱり失ってから気づく愚かさというか、失って初めて大切だったものに気づいた。

数年後、遺品整理の仕事を知り、ネットでいろいろ調べました。悪徳業者につかまって目の前で思い出の品を壊されたとか、ひどい言葉を投げられたとか、高額請求されたとか、嫌な思いをした依頼人の書き込みがあったんです。

家族を亡くした側からすれば、これは許せない。だったら私が遺品整理や特殊清掃をやろうと。悪は潰したいし、残された人の悲しみに寄り添って心の助けというか、前に一歩進む手伝いができればと。

換金できる物だけ持ち去った”友人”

――驚いたのは、片付け中の現場の8割に自称“友人”が来ること。

はい、結構な確率で。都営団地で清掃してると「何号室?」って普通に聞かれる。個人情報なのでごまかしても、すぐ情報が回って見にくるんです。使えそうな物があったら勝手に持っていったり、持ち去ろうとしているのを止めたり。「何かお宝あった?」って聞いてくる人もいます。あさる気満々で、私たちの到着前から待機していることもある。人間って亡くなったら物やお金だけになってしまうのかな、と思ったりしました。

フィギュアオタクの友人が勝手に上がり込んできたこともありました。それはもう早い。止める間もなく、「スゲー!」とか言って換金できる物だけ持ち去った。仲間の死を惜しむというふうじゃない。

――遺族の胸の内も複雑ですね。

ただ、故人とは縁を切っていた遺族の方が、「何で私たちが整理しないといけないの?」といら立って不満をぶつけてくることもある。

私自身がうちの父で苦労したのでわからなくないんです。「何があったんですか」と聞くと、借金して家族を捨てて逃げたとか。同情というか共感しますね。悪い思い出も話して発散することでモヤモヤが薄まればいいし、少しでも故人を送り出す気持ちになってもらえればと思って話を聞きます。

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