YouTuber議員の影響力をまるで侮れない理屈

「参加型民主主義」が広がれば分断も進む

国会議員のおよそ7割がYouTuber化しているというから驚く。「YouTube政治」という言葉が新たに生まれたぐらいで、日本などよりもYouTubeの影響力は大きい。中央日報は今年2月8日に興味深い記事を出している。

「YouTube政治」によって「伝統的なエリートが再編」される時期を迎えており、「一定の条件で扇動的で権威主義的なポピュリスト指導者の出現」が予想されるという、李準雄(イ・ジュンウン)ソウル大言論情報学科教授の見解を紹介している。

李教授は、従来の学閥や世襲などをベースにした「伝統的政治エリート」から「疎通型政治エリート」に置き換わる過程にあると主張。疎通型政治エリートとは「魅力、感動、説得力を武器に大衆と直接疎通して政治的動員をする」と述べている。日本では、N国党の立花氏がこれに当てはまるのではないだろうか。

「YouTube政治」の危うい魔力

政治家と視聴者が直接結び付くかのような親近感を強みとするYouTubeチャンネルは、街頭演説などとは異なる次元で有権者にアクセスすることを可能にしてしまう「飛び道具」だ。

いわばネット空間で無限に拡散・再生される“辻立ち”であり、持ち前のキャラクターなどを全面に打ち出すことによって、「知り合いや友人のような身近な存在」になれるチャンスが開かれる。そこでは、「感情を揺さぶる物語」を紡ぐことができる人物が優位に立つことになる。

P・W・シンガーとエマーソン・T・ブルッキングは、『「いいね!」戦争 兵器化するソーシャルメディア』(小林由香利訳、NHK出版)で以下の指摘をしている。

シンプルさ、共鳴、目新しさという三つの特徴によって、その「物語」が定着するか失敗に終わるかが決まる。極右の政治指導者や女性の権利を訴える活動家から、リアリティ番組で人気のセレブ、カーダシアン一家まで、誰もがしじゅう「“物語”を支配しろ」というのも当然だ。「物語」を支配することは、誰が英雄で誰が悪党か、何が正しくて何が間違っているか、何が真実で何が虚偽かを観察者に告げる。

楽しい気分の人と一緒にいると楽しくなり、悲しみに沈んでいる人と一緒にいると悲しくなる「情動感染」(emotional contagion)は、物理的に人と接しないソーシャルメディア上でも起こることが近年の研究でわかってきている。とくに「怒りの感情」は「情動感染」を誘発しやすく、これがよくも悪くも「参加型民主主義」に近い動員力を発揮することになる。

つまり、仮に多くの国会議員がYouTubeチャンネルで物語性を重視したコンテンツ制作によって支持者とのつながりを強化すればするほど、全体的には「隣村と話が通じない」といった分断が常態化した部族社会的な状況がもたらされることが容易に想像される。これはすでにネットの言論空間で起こっている「ソーシャルメディアにおける同族化現象」という深刻な事態である。

しかも、個人がそれぞれ見ているタイムライン、ニュースフィード等々により構成される世界像は隔絶しており、お互いが別々の宇宙の住人のごとく感じられる “他者のエイリアン化”がそれを後押しする。これが「YouTube政治」においても繰り返されることが懸念される。

国会議員の大半がYouTuber化した世界は、日本ではまだ現実味がない話に聞こえるかもしれない。だが、わたしたちの日常であるオンラインライフの政治版と考えれば、その極めて高い中毒性と危うい魔力は思い半ばに過ぎるものがあるだろう。

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