カシオが目指す「Gショック」一本足からの脱却 スポーツや医療など、新たな分野を開拓

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培ってきたカメラ技術を生かして、皮膚の病理診断に挑む(写真:カシオ計算機)

また、スポーツ以外では共創のテーマとなっているのが医療分野だ。千葉大学との共同研究を通し、皮膚の様子を明瞭に撮影できる「ダーモカメラ」を開発。さらに撮影された画像を自動分類するなど診断をサポートするソフトを信州大学と共同研究を行った。現在は皮膚科向けの製品が主だが、今後は歯科や耳鼻科向けに商品ラインナップを拡充させたいという。

さらに、半導体大手ルネサスエレクトロニクスとはイメージングモジュールの開発に取り組む。防犯カメラだけでなく、ATMやスタジアムの入場者管理に活用する生体認証技術や工場の自動化に使われるロボットの制御など医療以外にも画像技術を広げる試みも進む。

2018年に断行した組織改革

新規事業を展開するにあたっては外部との協力だけでなく、社内でも大きな組織改革が実施された。昨年4月、時計事業部やシステム事業部などそれぞれの事業部が持っていた開発機能を、新設した「開発本部」に集中させた。樫尾和宏社長は「バラバラにものづくりをしていたのを変え、開発本部や生産本部などにまとめ俯瞰できるようにした」と話す。

樫尾和宏社長は「どこに集中して資源を投じればいいのかを見える化できた」と話す(撮影:尾形文繁)

一連の改革では各部署でバラバラに研究開発を行っていたものを企画段階から各分野の開発者が集まり、議論を経てアイデアを練り上げる形に変わった。「ボトムアップ型の開発体制が望ましいが、これまでは部署ごとの縦割りもあり、何を開発するかそれぞれの上長が指示するという状態が続いたため、指示待ちする社員が多かった」(樫尾氏)。

部署を横断した開発体制によって、他部署がもっている技術やかかわっている市場に目が行くようになった。それにより、共創においてもどこと組んで、どのような市場に自社技術を活用できるか意識が向くようになりつつある。

Gショック以外の新たな柱を確立することができるのか。この数年の成果がカシオの成長を左右しそうだ。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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