日本人が驚く「中国アパレル業界」進化の実態 イノベーションが次々起こる「2つの理由」は?
2つ目は、「『ゾゾスーツ=失敗』と考える人によくある盲点」でも紹介した「衣邦人」である。
メンズのシャツやスーツをマス・カスタマイゼーションで展開する「衣邦人」は、2017年の12月期の売上げが50億円を超えるまでに成長し、売上げは年々倍増している。
中国では南北で平均身長に10センチの差があり、骨格や体型もかなり異なる。当然、必要なサイズ展開も地域により異なるため、日本のようにSMLのサイズ展開では間に合わない。
このように体型のバラツキが大きい中国では、とくにフィット感が価値となるメンズのスーツやシャツにおいて、岩盤の「カスタマイズニーズ」が存在する。このニーズに対して、アプリとスマートファクトリーを用いたマス・カスタマイゼーションをいち早く確立したのが「衣邦人」なのである。
「衣邦人」では消費者がアプリ経由で計測を申し込むと、「採寸師」と呼ばれる人が消費者のもとを実際に訪れ、サイズを計測する。
計測したデータはアプリに保存され、ユーザーは気に入ったアイテムを注文すれば、シームレスにデジタルでつながった工場にデータが送られ、数日でオーダーメイドのアイテムが生産できる。工場は省人化が進んだスマートファクトリーで、人手がかからないよう多くの工程が自動化されている。
マス・カスタマイゼーションにおいて、採寸・計測は乗り越える必要のある高いハードルだ。実際、各社スマートフォンのアプリや「ZOZOSUIT」のように技術を駆使しつつ、試行錯誤で「デファクトスタンダード(技術標準)」の構築に取り組んでいる。その領域を「人海戦術」であっさり乗り越えてしまうあたりが、中国企業らしいユニークな発想だ。
顧客体験としては、実際に採寸してもらったほうが、安心感があるし、満足度も高いという人が多いだろう。「衣邦人」は、人とテクノロジーを組み合わせた価値創造の好事例といえる。
このように、テクノロジーを活用したさまざまなファッションテック企業が登場している中国であるが、最近ではデザインやクリエーションにおいてもAIの活用が試みられている。
デザインにおいてもテクノロジーを活用する最新企業
「ディープブルーテクノロジー」は中国を代表するAI関連スタートアップの1つで、ロボット、無人コンビニ、自動運転走行車、セキュリティーなど、さまざまなAIソリューションを提供している会社である。
日本企業でもイオングループが「ディープブルーテクノロジー」と提携し、無人店舗の共同開発に乗り出すなど、さまざまな業界で話題を作ってきた。
この「ディープブルーテクノロジー」が2019年4月に中国で行われたファッションデザインのコンペティションChina International Fashion Design Innovation Competition (中国国际服装设计创新大赛)にて、AIで作成した作品を発表し、話題となった。
同社が開発したAIデザインシステムのDeep Vogueに画像データやキーワードを読み込ませ、独創的なデザインを生成。Deep Vogue以外はすべて人間のデザイナーが参加するなか、最終的にDeep Vogueは全16人中2位となった。
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