日本人が驚く「中国アパレル業界」進化の実態 イノベーションが次々起こる「2つの理由」は?

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このようにデジタル活用の興味深い事例が次々と生まれる中国であるが、なぜ次々とイノベーションが生まれるのだろうか。冒頭で述べた「社会のデジタル化が一気に進んだ」ことに加えて、大きく2つの要因がある。

中国アパレル業界でイノベーションが生まれる2つの要因

【イノベーションが起こる要因1】新陳代謝のスピードが速い多産多死のエコシステム

第1に、新陳代謝のスピードがものすごく速い、多産多死のスタートアップのエコシステムが成り立っていることだ。

膨大な余剰マネーがスタートアップの資金に流れ込み、多くの優秀な若者が成功を夢見て起業に走る。結果、サブスクリプション、AI、ロボットなど、グローバルで注目されているテーマで次々とスタートアップが生まれる。

そして、優れたビジネスモデルやサービスはすぐにコピーされ、同じようなスタートアップが乱立する。そのなかで過酷な競争から生き残った数少ない会社が、模倣困難なイノベーションを生み出していく。

一時期、シェアサイクルの乱立と膨大な廃棄自転車の山が話題を呼んだように、多産多死のこの仕組みには負の側面もある。ただ、日本とは比較にならないくらいダイナミックなエコシステムが、革新的なイノベーションの創出に寄与していることは間違いない。

【イノベーションが起こる要因2】官民一体となった推進力

第2に、官民一体となったとてつもないイノベーション推進力である。

例えば、中国は2030年に向け「次世代AI発展計画」という国家計画を掲げ、官民を挙げてAIイノベーションの世界的なリーダーになることを目指している。

参加している民間企業も、百度(バイドゥ:Baidu)、アリババ(Alibaba)、テンセント(Tencent)、アイフライテック(IFlytek)、センスタイム(SenseTime)と、中国を代表するそうそうたるテック企業が並ぶ。

これらの企業が、官の旗印の下、約14億人の人口から得られる膨大な(かつ公私を問わない)ビッグデータを活用し、AIイノベーションを行っていく。プライバシーに関わる情報取扱いに敏感な欧米諸国では難しい、中国ならではの壮大な社会実験が行われているのだ。

これまでアパレル業界における中国は、OEMなどでのものづくりが主で、いわば世界の工場の役目であった。しかしながら、驚異的なスピードで進むデジタル化と最終消費市場としてのプレゼンスが高まるなか、2030年にはその立ち位置は大きく変わっているかもしれない。

書籍『2030年アパレルの未来 日本企業が半分になる日』の第2刷の一部におきまして、弊社の編集過程で誤りがありました。著者ならびに読者の皆さまに心からお詫びの上、以下のように訂正させていただきます。
224ページ前から5行目
誤:「約5000億円」
正:「約500億円」
なお、当該書籍をご購入された方は、下記まで着払でお送り下さい。訂正済みの書籍と交換させていただきます。
〒103-8345 東京都中央区日本橋本石町1-2-1 株式会社東洋経済新報社 営業推進部

(東洋経済新報社 出版局)

福田 稔 KEARNEYシニアパートナー

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ふくだ みのる / Minoru Fukuda

慶應義塾大学卒業、IESEビジネススクール経営学修士(MBA)修了。電通国際情報サービス、欧州系戦略コンサルを経て、A.T. カーニー入社。主に、アパレル・繊維、ラグジュアリー、化粧品、小売、飲料、ネットサービスなどのライフスタイル領域を中心に、戦略策定・ブランドマネジメント・グリーントランスフォーメーション・DX等のコンサルティングに従事。プライベートエクイティやスタートアップへの支援経験も豊富。経済産業省の産業構造審議会 繊維産業小委員会委員、繊維製品における資源循環システム検討会委員、ファッション未来研究会副座長。著書に『2030年アパレルの未来』『2040年アパレルの未来』(共に東洋経済新報社)がある。

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