「伊藤忠ドール」が変える世界の果物流通

1569億円!伊藤忠の最大買収案件、仕掛け人に聞く

「日本未上陸」の健康系ヒット商品も検討中

3本柱のまずひとつ目、「“美と健康”の新商品開発」。これまでドールとして扱ってきた商品は、バナナやパイナップルの缶詰、フルーツボールなどであったが、「これからはその発想を変えてやっていきたい」(山村氏)と言う。たとえば、アメリカには日本ではまだ出ていないドールの「Mrs. May’s」というナッツなどを固めた栄養価の高いクランチ状の食品がある。このような健康カテゴリーに入るような商品は、アジアでも受け入れられるのか慎重に見極めていく。そうして商品ラインナップを増やすことで、すでに飽和市場といわれる日本や韓国などでも収益を拡大していく考えだ。

また、新商品に限らず、人口が増加し食の西洋化が進んでいるような中国や中東などの新興国では、従来型の商品も積極的に売っていく。国の所得水準や需要、果物を食べるシーン、それらにあわせて変化するスーパーマーケットなど、売り場の状況を鑑みて、攻勢をかける市場の優先順位を決めていく。

日本とアジア諸国のインフラの状況の違いについて語る米田氏

優先順位を決める際、重要な指標となるのが「インフラ」だと米田氏は言う。特にコールドチェーン(冷えた流通網)の整備状況である。缶詰などの加工品ならある程度の期間保管したり、時間をかけて運ぶこともできるが、生ものとなるとそうはいかない。収穫後、5日から1週間ぐらいかけて青色から黄色に熟成していくバナナを、安定して全国の小売店に供給できるのはアジアでは日本ぐらい。韓国でもまだ不十分、中国に至っては沿岸部数十キロ圏内のみ。こうしたインフラをドール1社が整備していくことは現実的ではないからだ。逆にインフラが高度化すれば勝機はある。

しかし、従来型の商品を売るにあたって、アジアならではの難しさがあるという。それは、アジアの国々がそもそもフルーツの生産国であり参入障壁があること。フィリピンで作って、船で運ばれてきたドールのバナナが、地場で作られたものに価格を合わせられるのかというと難しく、どうしても富裕層をターゲットとした市場に限定されてしまう。さらに、地場の果物産業を守るためにフィリピンからの輸入を制限している国もある。そうした場合には、地場で生産拠点を作る新たなビジネスモデルが必要になるだろう。そのときには、フィリピンから地場へドールの品種や栽培ノウハウを移植し、フードセーフティ、品質、おいしさなどの点からもドールのクオリティを落とさない努力が不可欠だという(山村氏)。

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