「伊藤忠ドール」が変える世界の果物流通
1569億円!伊藤忠の最大買収案件、仕掛け人に聞く

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メイド・イン・ジャパンとメイド・バイ・ジャパン

伊藤忠ドールの掲げる2つ目の柱「ライセンスビジネス」は、他社にドールブランドの使用権を付与する事業だ。これは韓国メーカーが作るヨーグルトで、すでに商品化され、実績がある。この事業では、商品にドールのブランドロゴが使用されるだけでなく、品質管理や時には原材料、製造方法にまで入り込むこともある。消費者は「ドールは果物の会社だから、おいしいフルーツがたくさん入っているものだ」という印象を覚え、売れ行きも好調だという。

「日本の果物の品質は世界一」と語る山村氏

最後の「国内農業の活性化」については、日本のイチゴやリンゴなどの果物農家と契約し、できた果物を海外市場に向けて売っていく。ドールが策定する基準を満たした生産者に種や資材、肥料などを提供し、農家には作ることに集中してもらう。出来上がった果物は「メイド・イン・ジャパン」であり、ドールブランドであるため、「ほかとそうとう差別化できる」という(山村氏)。さらに、日本の高い技術とノウハウを海外の地場の生産地に移植した「メイド・バイ・ジャパン」の加工品を展開することも選択肢のひとつ。「日本の農業は、TPPでこれからどうなるかわからない。日本の農業が産業化され、競争力を持ち、生産者の方々の収入が上がっていく、そのお手伝いをしていかなくてはいけない」(同氏)。

取材中、よく飛び出したのが「クオリティ」という言葉だ。これは、米ドール創業者ジェームズ・ドールのモットー「クオリティ、クオリティ。クオリティ」を2人が引用したもの。創業者の思いを、アジアでは日本の伊藤忠ドールが引き継ぎ、「バナナとパイナップルで世界ナンバーワン」(山村氏)を目指す。

岡 徳之 ライター Noriyuki Oka Tokyo 代表取締役

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おか のりゆき

1986 年長崎県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、PR 会社ビルコムで2 年4 ヶ月勤務。2011 年8 月に企業PR・ウェブ企画開発・編集ライティングを専門分野として開業。現在はシンガポールを拠点に事業運営に携わる。国内大手企業のウェブプロモーション業務に従事する傍ら、CNET Japan やITmedia など国内の有力ニュースサイトを中心に10 数媒体で執筆を担当。ライターとしての専門領域はIT・ビジネス・マーケティング・クリエイティブ・ライフ・グルメ・人物インタビューなど多岐に渡る。事業会社が運営する自社メディアでの編集ライティング案件にも携わる。異なる専門領域を持つフリーライターと連係し、編集プロダクション的機能も果たす。

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