ABCクッキングが遠隔料理教室を行うワケ NTTドコモ傘下入りで通信を活用したサービスを加速

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2月7日に披露したのは、日本と香港のスタジオを中継し、同時にレッスンを行う「グローバルレッスン」のデモだった。この日の課題料理は太巻き寿司。まず、日本のスタジオの講師が、具材の乗せ方や寿司の巻き方などを説明しながら、手本を見せていく。手元の動きはつねにカメラが撮影しており、日本のスタジオでは生徒の目の前に置かれたタブレットに、香港のスタジオではスクリーンに映し出される。講師は香港のスタジオの進み具合もチェックしながら、盛りつけなどの作業を指示し、料理を完成させていった。

今回のデモは海外との中継だったが、講師やスタッフの確保が難しい状況は地方も同じ。中継によるライブレッスンを行うことで、これまで出店できなかった地域でも、小型のスタジオなどによる出店余地が生まれるという。

動画サイトもオープン

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料理の動画が見られるサイト「ABC Cooking Channel」も2月にオープン。「ドコモとさらにブラッシュアップしていきたい」(ABCの櫻井雅子社長)

このほか、ABCは料理方法を紹介する動画サイト「ABC Cooking Channel」も2月からオープン。スタジオのレッスン以外の日も、会員に積極的に学んでもらうための仕掛けだ。

現在600本程度の動画を配信しているが、今後は海外の有名シェフによるレッスン動画など、さらにコンテンツを拡充していく構えだ。

 ABCの櫻井稚子社長は「通うことが難しくなった方や、一度あきらめてしまった方に対してどんなサービスを提供できるか考えたとき、現状のコンテンツでは限界があると感じていた。ドコモと一緒にやっていくことで、家庭でもスタジオと同じレッスンが体験でき、同じ食材が届くといった価値のあるサービスを提供していきたい」と話していた。

ドコモのライフサポートビジネス推進部長を務める中山俊樹氏は、資本提携に踏み込んだ理由について、「単に業務提携ではどちらがコストを負担するのかといった問題があり、時間がかかる。取り組みを一気に加速するためだった」と説明。「われわれが持つ認証、課金、クラウド、映像配信などの技術を使ってブレイクスルーしたい。海外を含めてかなりのスピードで出店していく」との考えを示した。

また、ドコモにとってのメリットは、「ABCの成長によってリターンを得られること」と説明した。サービスをドコモがアレンジしてユーザーに届けるのではなく、あくまでその企業がドコモのインフラを活用することで、自律的に成長することを促す。中山氏が言うように、子会社化したことでサービスを一気に加速できるかどうかがポイントになりそうだ。

テレビ通販、有機野菜の宅配、CDショップ、ファッション通販…。ここ数年、積極的に異業種の買収を進めてきたNTTドコモ。矢継ぎ早に買収を仕掛けるのは、主力の通信事業の鈍化を見据え、新たな収益源を模索しているからだ。2015年度までに、コンテンツ配信やネット通販、金融などのサービス分野で売上高1兆円を目指すという野心的な構想を掲げている。

そんなドコモが次の一手として選んだのが、料理教室最大手の「ABC Cooking Studio(以下ABC)」だ。両社は昨年4月から業務提携し、タブレットを活用したレッスンなどで実験を進めてきた。今年1月にはドコモがABCの運営会社「ABC HOLDINDS」の株式51%を取得し、子会社化している。

ABCは関東を中心に全国で128のスタジオ(料理教室)を持つ。ショッピングモールや百貨店などの商業施設にテナントとして入居しているケースが多い。会員の大半は20~30代の若い女性で、毎週教室に通うアクティブ会員は現在28万人を誇る。海外も北京、上海、香港で6店舗を展開している。

目下、ABCが注力しているのは、スマ―トフォンホやタブレットを使った遠隔レッスンと動画コンテンツの配信だ。多くの会員を抱えるABCだが、近くにスタジオがない地方ではレッスンを受ける機会がなく、また、一度レッスンを体験しても、仕事や家庭の都合などで通うことを断念してしまう会員も多いという課題を抱えていた。

一段と事業を拡大していくためには、これまでのような、リアル店舗だけの展開では限界がある。そこで、ドコモと連携して、家庭へもタブレット端末でレッスンを提供できるようにし、旗艦スタジオのレッスンを中継する形で、地方や海外でも出店できるようにする、といった仕組み作りを進めてきたのだ。

見出し 日本と香港を中継する「グローバルレッスン」

2月7日に披露されたのは、日本と香港のスタジオを中継し、同時にレッスンを行う「グローバルレッスン」のデモだった。この日の課題料理は太巻き寿司。まず、日本のスタジオの講師が、具材の乗せ方や寿司の巻き方などを説明しながら、手本を見せていく。手元の動きはつねにカメラが撮影しており、日本のスタジオでは生徒の目の前に置かれたタブレットに、香港のスタジオではスクリーンに映し出される。講師は香港のスタジオの進み具合もチェックしながら、盛りつけなどの作業を指示し、料理を完成させていった。

今回のデモは海外との中継だったが、講師やスタッフの確保が難しい状況は地方も同じ。中継によるライブレッスンを行うことで、これまで出店できなかった地域でも、小型のスタジオなどによる出店余地が生まれるという。

このほか、ABCは料理方法を紹介する動画サイト「ABC Cooking Channel」も2月からオープンさせている。スタジオのレッスン以外の日も、会員に積極的に学んでもらうための仕掛けだ。現在600本程度の動画を配信しているが、今後は海外の有名シェフによるレッスン動画など、さらにコンテンツを拡充していく構えだ。ABCの櫻井稚子社長は「通うことが難しくなった方や、一度あきらめてしまった方に対してどんなサービスを提供できるか考えたとき、現状のコンテンツでは限界があると感じていた。ドコモと一緒にやっていくことで、家庭でもスタジオと同じレッスンが体験でき、同じ食材が届くといった価値のあるサービスを提供していきたい」と話していた。

ドコモのライフサポートビジネス推進部長を務める中山俊樹氏は、資本提携に踏み込んだ理由について、「単に業務提携ではどちらがコストを負担するのかといった問題があり時間がかかる。取り組みを一気に加速するためだった」と説明。「われわれが持つ認証、課金、クラウド、映像配信などの技術を使ってブレイクスルーしたい。海外を含めてかなりのスピードで出店していく」との考えを示した。

また、ドコモにとってのメリットは、ABCの成長によってリターンを得られることであると、説明した。これまで買収した企業のように、サービスをドコモ流にアレンジしてユーザーに届けるのではなく、ドコモのインフラを活用することで、企業自体の高成長を目指すスタンスと言える。中山氏が言うように、子会社化したことでサービスを一気に加速できるかどうかがポイントになりそうだ。

 

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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