シノブフーズの「おにぎり」はここまで徹底する さまざまな設備を導入し、人手不足に対応

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シノブフーズでは、以前から工場の自動化を進めていたが、かつては生産性向上に主眼を置いていた。しかし、2014年頃からは、人手不足に対応するために省力化や省人化、職場環境の改善を見据えて機械化を促進している。同時に、品質向上や省エネルギー化も追求する。

現在、新関西工場での生産量は旧関西工場より1.2~1.3倍に増加している。一方、人員の数は旧関西工場で元々勤務していた約590人に加えて、今後の新関西工場の生産量増加を見込んで多めに採用した技能実習生40人の増加にとどめることができている。

「ここ3、4年はアルバイトを募集しても集まらなかった。商品1個当たりの儲けが小さい中で、人が確実に集まるわけでもないのに時給を上げるのは難しい。会社全体として省人化を進める方針で、採算を取れるなら迷うことなく新たな設備を導入する」と、田向工場長は話す。

機械メーカーとの関係を密にする

機械メーカーとのコミュニケーションも密にしていく。かつてはメーカーが製造した設備を購入するだけだったが、2016年3月に「設備部」を立ち上げた。メーカーとの連携を図る部署で、ここで必要とする性能を伝えることなどにより、シノブフーズの工場により適した設備を製造してもらう狙いがある。

おにぎりや弁当は完成後、店舗ごとに必要とする数が番重に詰められる(記者撮影)

今後の省人化に向けては、課題も残る。「さらに省人化を進めたいが、機能的に難しい工程もある」(田向工場長)。例えば、弁当製造工程で機械化を進めようにも、機械で盛り付けを行うのは難しい。しかも、コンビニの商品の販売期間は1~2カ月程度の場合もあるほど短く、多種多様な弁当に対応する機械を導入するのは容易ではない。

拡大し続けてきたコンビニ業界が、ここにきて頭打ち状態にあることも懸念材料となる。シノブフーズの主要顧客であるファミリーマートは、サークルKサンクスと統合し不採算店を閉鎖する中で、2019年2月期末の国内店舗数は1万6430店舗と、前期末比802店舗減少した。2019年2月期の既存店1日当たり平均売上高も53.8万円と、ほぼ横ばいだった。

シノブフーズなどの中食製造会社は今後、コンビニの売り上げがなかなか伸びず、人手不足も続く見込みの中、工場自動化に向けた投資と収益性のバランスをいかに保っていくのか、難しい舵取りが求められる。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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