「できる事しかやらない部下」を覚醒させる方法 「コンフォートゾーン」から脱出させるには

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若い部下なら、このように育てることができる。一方、ベテランの部下に対してはどうでしょうか? あなたのまわりにも、

「本気を出そうとしないベテラン部下」

「会社の文句ばかり言うベテラン」

「重要な局面でも、どこか他人ごとのベテラン」

といった人材がいるかもしれません。

本気を出そうとしないベテランにどう対処すべきか?

「ベテランは、いまさら変わらないから」と諦めてしまうのはちょっと待って。プレイングマネジャーが、自身の仕事をラクにするためには、新人のように一から教える必要もなく、経験もあるベテランの力を生かさない手はありません。

そのために必要なのは、彼らの「強み(得意なこと)に着目する」こと。もちろん、個人差はありますが、年齢による傾向は意識したほうがいいでしょう。

たとえば、スピードが求められる作業については、30歳以降、一貫して能力の低下が見られ、50代後半になると、25歳の約8~9割になるとも言われています。そう考えると、ベテランにスピードが求められる業務を期待するのは適正ではないでしょう。

逆に、言語能力、つまり語彙力をベースとした説明力や思考力は、50代半ばまで上昇し続け、40代、50代では、25歳の人よりも5%程度能力が高いと言われています。

ゆえに、相手の発言の真意を理解する力、相手の感情を洞察して適切な対話をする力、わかりやすく説明する力は、若手よりも高いというのが一般的な傾向なのです。

(図)『メンバーが勝手に動く最高のチームをつくる プレイングマネジャーの基本 』より

そう考えると、若手の相談に乗る、新人に仕事を教える、チーム内のマニュアルをつくる、社内外に自社商品の特徴や販促の方針を説明する、お客様を担当してもらう接客等、ベテラン世代が得意とする「言語領域」の能力を活用しない手はありません。

眠れるベテランは、あなたの仕事を任せられる同志なのです。

『メンバーが勝手に動く最高のチームをつくる プレイングマネジャーの基本 』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

また、研修時にクライアントのベテラン社員の方とお話しすると、じつは、40代、50代の人たちも「もっと挑戦して、ガツガツしなきゃ」と、自身にチャレンジ精神がなくなっていることを反省していることが多いのです。

もし、眠れるベテランがいれば、さらなる生かし方を考えてみてください。ベテランも心の底では「まだまだ燃えたい」と思っているかもしれません。

いいマネジャーかどうかは、部下の眠れる力をうまく活用できるかどうかで決まると言っても過言ではない、これが私の持論です。ぜひ、若手を適切に育て、ベテランの「強み」を生かして、チームをまとめあげていきましょう。

伊庭 正康 らしさラボ代表

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いば まさやす / Masayasu Iba

1991年リクルートグループ入社。営業職としては致命的な人見知りを4万件を超える訪問活動を通して克服。その後はプレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回、累計40回以上の社内表彰を受ける。営業部長、フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。2011年、研修会社らしさラボを設立。リクルートで学んだ「圧倒的な当事者意識」を持つことや「短時間で成果を出す方法」などをメインテーマに、リーディングカンパニーを中心に年間200回を超えるセッション(営業研修、営業リーダー研修、コーチング、講演)を行い、リピート率は9割を超えている。

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