日本酒にボタニカルを足すと、こんなにうまい

世界で広がる「SAKE革命」は洋食にも響く

日本酒と出会ったのは、社会人になってからの鮨屋で、日本酒「真澄」の「あらばしり」を飲んだときだった。フランス留学でワインにどっぷりはまった稲川だったが、「日本酒って、先輩に飲まされる悪酔いする酒というイメージを持っていたが、かけ離れていた。こんなに味の幅があるなんて」と雷に打たれる。ボスコンを2年で退職し、起業へと舵を切った。

とはいえ、日本酒の酒造免許を取得するのは、ハードルが高い。最初は酒蔵に委託し、オリジナルの純米酒を開発した。おしゃれなラベルで「飲み比べセット」を販売してみたものの、割高にもかかわらず付加価値をつけられずに撃沈。「とにかくマネタイズに苦しんだ。エッジの立った新しいことをしないと存在価値がない」。頭ではわかっても、その答えが見つからなかった。

樽熟成やボタニカル素材を使うことで、洋食に合う革新的な日本酒を開発している(撮影・今井康一)

もがく稲川は起業から半年後、山形県鶴岡市への移住を決める。鶴岡には慶應義塾大学先端生命科学研究所があり、クモ糸繊維を開発するスパイバーや、腸内細菌を研究するメタジェンをはじめとするバイオベンチャーもある。誘致にも積極的だ。WAKAZEにとっては、多くの酒蔵が点在している点も魅力的だった。

拠点を移したものの、開発コンセプトを決めなければ前に進まない。稲川はワインや発酵など、あらゆる科学論文を読みあさり、開発に没頭する。試行錯誤の末、ワイン樽で熟成させた日本酒のレシピを編み出すが、委託醸造に応じてくれる酒蔵を探すのは、至難の業だった。あらゆる酒蔵に足を運び、頭を下げ、断られることを繰り返し経験しながら、何とか見つけることができた。

バイオテクノロジーで引き出した未知の味

約1年間のモラトリアム期間を経て、2017年初にリリースした樽熟成の日本酒「ORBIA(オルビア)」シリーズは、酸味と甘みに特徴があり、熟成感や樽由来の香りを楽しめる、洋食とペアリングできるも個性的な日本酒だ。ソムリエやフランス人などにヒアリングを重ね、試行錯誤の末にたどりついた自信作となった。

このころ稲川は、新たな出会いを経験している。イギリス・ロンドンでクラフトジンを飲み、そのおいしさに衝撃を受けたのだ。調べてみると24種ものボタニカルを使用していることを知る。日本酒造りにも取り入れられないかと思いつき、帰国後にオフィスや自宅で1人黙々と、さまざまな日本酒とボタニカルの組み合わせを試していった。

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