「急にガタがきた」体で密かに起きている大変化 不調の原因を加齢と決めつけるのは危険だ

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不調がちな人の多くは背中を引き締める筋肉が弱っていますが、さらによく観察していくと、背骨の下のほうの動きが悪いことがわかります。

背骨の土台部分である腰椎が動きにくいと、背骨全体が描くはずのS字カーブがくずれてしまいます。S字カーブは、バネやクッションのように衝撃を軽減させる、人体を守るうえで極めて重要な構造です。このS字カーブがないと、あらゆる動作のときに体にかかる衝撃で体を外側に強く引き下げる力がかかり、痛みや不調を呼ぶ原因に。

逆にS字カーブが機能していれば、背中を引き締める筋肉もはたらきやすくなります。しかも背中が引き締まると胸郭がグッと引き上げられて広がるため、肺がふくらみやすくなり、呼吸も自然に深くなるのです。

太もも背面が重要

このS字カーブという、人体に重要な構造を強い力でくずしかねないのが、太もも背面。ここの筋肉が硬く縮むと、腰椎は強い力で四六時中引き下げられ固まっていきます。元気に長生きする人は、同年齢の平均より歩幅が広いことが多いですが、これは太もも背面がよく伸びるからこそ。

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90代のはつらつとした女性も、100歳を超えた元気な男性も、太もも背面がよく伸びることを考えると、ここの状態が健康長寿のカギを握ると言っていいでしょう。大股で歩いていて太もも背面が硬く、伸びが悪いと感じたら要注意です。

背中や太もも裏側に体のバランスがくずれたことを示すシグナルがあらわれていたら、どうすればいいのでしょうか。どちらも、硬くなっていたり力を失ったりした原因は、その部位を正しく動かせていないことにあります。ですから、うまく動かして本来の筋肉や関節のはたらきを取り戻すことが効果的です。

あお向けに寝てひざを胸に引き寄せ、脚を伸ばしてから下ろす。下ろしたところでかかととつま先を交互に伸ばす「引き合う動き」をすると、腰・足首・ひざの3カ所を支点に、体の背面を中心とした多くの筋肉が連動します。腰と足先の両サイドからひざ関節を適度に引き合うことで、縮んだ筋肉がゆるむのです。

この体操は、自分の脚の重みを利用して自分で動くだけなので、体がだいぶ弱った人や高齢者でも安心して取り組めます。体を最も効率的に動かす力学に沿った、自然な動作ができるようになっていくので、ぜひ不調の解消にお役立ていただければと思います。

井本 邦昭 井本整体主宰、医学博士

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いもと くにあき / Kuniaki Imoto

1944年山口県生まれ。整体指導者の父・良夫氏より5歳のときから整体の手ほどきを受ける。その後、ヨーロッパで鍼灸を指導する一方でスイス、ドイツで西洋医学を学ぶ。帰国後から現在に至るまで、東京および山口にて整体指導を続けている。また、後継者育成のため2004年8月にそれまでの原宿教室と音羽教室を統合し、人体力学の井本整体東京本部(東京・千駄ケ谷)を設立。生徒指導のため山口―東京間を往復する日々を送っている。著書に『たった5分で体が変わる すごい熱刺激』(サンマーク出版)、シリーズ累計46万部を超える『弱った体がよみがえる人体力学』(高橋書店)ほか多数。

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