日本円には、米景気を中心とする世界景気が減速する時に円高になりやすいという、「やっかいな性質」がある。市場のセオリーとして、景気減速は長短の金利の下落要因だが、日本の場合短期金利だけでなく、やや長めの金利も0%に近い水準にある一方、外国の金利は景気後退観測に対して素直に下落するので、全般的な不況は、金利差面で外国の金利低下が円高への圧力になってしまう。
これに加えて、新興国通貨などに不安が生じた場合、円には、相対的に安全な通貨として買われる需要もある。筆者が、読み違えていた、あるいは軽視していたのは、米景気の減速懸念が生じた時の円高圧力の(特に短期的な)大きさだ(素直に「スミマセン!」)。
株式投資をやめたり、持ち株を減らす必要はあるか
仮定の話で恐縮だが、今後、米景気が順調に拡大することが確認されれば、景色は一変するだろう。日本にいると北米の寒波の影響が読みにくいが、寒波が緩んで生産と雇用が戻ってきたことがデータで確認されれば、一転して、円安と株高に大きく振れる公算が大きい。
こうした「仮定」に期待を掛けすぎるのは、「ペースが上がれば(仮定)、差しが届くだろう(期待)」と考えて、差し馬の馬券に収支の逆転を託す競馬ファンのような、勝負にあって「甘い」姿勢である可能性を客観視しなければならない。だが、個人の株式投資のテンポと取引手数料を考えると、現状は、「今すぐに持ち株の一部を売る必要はなく、もう少し様子を見ていい」状況だろう。
この種の「材料」の激しい影響に対して、株価の高・安の評価には漢方薬的な効き目しかないが、投資家の精神安定剤代わりに東証1部の現状(2月4日終値時点)を見ると、PER14.88倍(全銘柄単純平均、日経今期予想ベース)は、益利回りで6.72%あり、利益成長率を加味しなくとも長期金利(0.605%)を6%以上も上回っている。
少なくとも株価は「割高」ではないし、素直に見るなら「割安」の圏内だ。資金とリスクに余裕があれば、買ってもいい水準だろう。NISA(少額投資非課税制度)で投資をはじめたような初心者には、全く気の休まらない展開だが、筆者は、まだ株式投資から「降りる」タイミングではないと思っている。
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