女性2人が体験した、本当に怖い「相続の失敗」 日本で一番相続を扱う事務所が教える

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よく誤解されがちですが、遺言を書けば、自動的にそのとおりになるわけではありません。誰かがその遺言を持って、名義変更などの手続きのために金融機関回りをしなければならず、この事務手続きをする人のことを「遺言執行者」といいます。遺言執行者は相続人の一人でも構いません。このケースではA子さんでも構わなかったのです。

遺言執行者が記載されていない遺言の場合は、換金や名義変更の手続きに相続人全員の協力が必要となるのが一般的です。A子さんのケースのように、相続人同士がうまくいっていない場合は、預貯金の払い戻しすらスムーズにできない恐れが出てきます。

家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てるという方法もありますが、相続人間で揉めていると遺言執行者の候補について意見がまとまらないことも多く、また選任までは時間もかかるため、やはりスムーズな相続とはいきません。

せっかくご自身の思いを伝え、残された相続人が揉めずにスムーズに相続してくれることを祈って遺言をしたためたのに、遺言執行者を決めておかなかったばかりに、相続人に余計な心労を与えてしまったのがこのケースです。「争族」を避けるために、細部まで気を抜かないことが重要です。

贈与税なしでもらったお金も相続時に精算!?

今度は贈与税で失敗したB子さんのケースです。

B子さんは父親から相続対策にと、毎年110万円の現金の贈与を受けてきました。1暦年に110万円までであれば、贈与税はかからないからです。

あるとき、起業することにしたB子さんは、まとまった金額を贈与してもらうこととなりました。インターネットで調べたところ、「相続時精算課税制度」という制度を選択すれば、2500万円まで贈与税がかからないことを知り、父にはその年2500万円を贈与してもらい、税務署への届出や申告は自分で済ませました。本当に贈与税は0で済み、ほっとしたといいます。

翌年からは、金額を年間110万円に戻し、現金の贈与を受け続けて10年後、父が亡くなりました。

ところが……、父の相続税申告を済ませて数カ月後、税務署から突然の連絡が。「相続時精算課税制度による贈与財産」2500万円が申告から漏れているというのです。

さらには相続時精算課税制度を選択して以降、受け取った110万円×10年分=1100万円についても、相続税申告に追加計上しなければならないうえ、贈与税の期限後申告まですることとなり、延滞税や加算税も含め、多額の納税が必要に。きちんと調べて、適切な手続きをしてきたと思ってきたB子さんは、驚いてしまいました。

B子さんはいったいどうすればよかったのでしょうか。

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