日本企業の「食事代支給」があまりに少ない事情 欧州では食事代支給が義務づけられている
また、EU諸国では、食事補助が正しく効果的に使われるよう、国境を越えた食と健康のプロジェクトがいくつか展開されてきました。たとえば2009年に産官学が共同で立ち上げたコンソーシアム「FOOD(Fighting Obesity through Offer and Demand)」は、団体名にあるとおり需要と供給の好循環により予防的に肥満を減らすことを目的に活動しています。
現在EU10カ国が加盟するこのプログラムは、各種啓蒙ツールの提供はもちろん、食の提供側(レストラン)と享受側(従業員)の双方にバランスのよい食事を取ることの大切さを広める食育プログラムを展開し、健康的なメニューを提供するレストランの認定制度と検索サイトの公開、職場の食生活の改善調査の実施や成功事例の共有などの活動を通じ、需要と供給が回るしくみを構築・維持する努力が続けられています。
これは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs) 」とも連動していくことでしょう。SDGsは17の国際目標からなり、2016年から2030年までの集中期間にすべての人が個別多様性を保ちながらともに明るい未来を築くことを目指しており、先進国こそ取り組むべき普遍的な目標が含まれています。
日本では企業規模や地域によって「格差」
ここまで日本とヨーロッパの食事補助の現状を見てきましたが、日本での食事補助については、大企業と中小企業で導入率が大きく違います。大企業や製造業の大型工場などには社員食堂があるのに対し、中小企業では食事補助のみならず福利厚生全般のメニューが少ないのです。大企業でも小さな拠点では社員食堂がない場合もあります。
つまり規模や地域によって格差が激しい場合、ヨーロッパに比べてさらに不公平感が出てしまいます。不利な側の従業員は、「しかたない」とあきらめているかもしれません。隣の芝生ならぬ隣の職場がうらやましくもなるでしょう。
企業は今、バブル期をしのぐ人材不足に悩んでいます。特に中小企業の雇用対策が深刻です。そのうえ2020年(中小企業は2021年)4月1日に施行される同一労働同一賃金に向けて給与規定等の見直しや毎年の給与改定の際に大幅な給与増額が難しい。少ない人数で労働生産性を高めるには、企業側が意識的に目の前の人材を十分にケアし、最高のコンディションで気分よく働いてもらうのが一番の近道です。
良質な食事や休息は日々の労働生産性のみならず、健康寿命にも影響します。フランス人としては、何より仕事中の食事をもっと大事にしてほしいと思いますし、世界中から観光客が来て味わっている日本のレストランの食事を、日本人こそおおいに楽しみましょうと言いたいです。
おいしくて楽しいランチタイムを仲間と過ごした社員が仕事で成果を出し、そして企業の業績が上がれば、レストランも企業も従業員も、めぐりめぐって全員がSDGsの達成に大きく貢献することでしょう。
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