農業で本当に食べていけるの? 若者の新規就農の理想と現実
政府は昨年、成長戦略の中で、40代以下の農業従事者を現在の約20万人から10年後には40万人に倍増させる目標を掲げた。これに先立ち、12年度から45歳未満の就農者に対して年150万円を最長5年間給付するといった、『青年就農給付金』も始まっている。この制度により、12年度の39歳以下の『新規参入者』の数は約1500人と前年比2倍となった。
しかし、補助金効果で就農者が増えたとすれば、補助金が切れたら、やがて離農率が高くなることも懸念される。新規就農者を増やすために何が必要なのだろうか。実際に新規就農した若者の取り組みを見ながら考えたい。
交流イベントに展開するも厳しい経営状況
舩木翔平さんは東京・八王子市での非農家出身の独立農家第一号だ。農業高校、農業大学校を卒業後、自分の強みを活かして、農業を通した街おこしがしたい、という思いから就農を決意。2012年3月にサツマイモなど野菜の栽培を1ヘクタールでスタートさせた。そしてそのわずか1年後の2013年3月には株式会社フィオを設立。農業生産だけでなく農業を通した交流事業を手掛けている。
「農業という業界に入った人間は野菜を作りたいものだと思われがち。でも、農業だけがしたいわけではない。ファーマーズマーケットや農業体験といったイベントを開催し、農地が地元にある意義を地域の人に感じてもらいたい」と、会社を設立した理由を話す。
このため、設立形態も売り上げの半分を農業収入が占めなければならない農業生産法人ではなく、他の事業も広げられるよう一般法人を選択。これにより生産した野菜を幼稚園などに販売すると同時に、農業体験のイベントを請け負うなど多様な営業活動が可能になった。
ただ、会社設立の初年度であった2013年は、イベントなどの準備に奔走したため、種まきが間に合わないなど、肝心の農業生産が伸び悩んだ。作物売上高は190万円程度にとどまり、イベント売上高30万円と合わせて初年度売上高は220万円。ここから費用を差し引きし、利益は60万円と厳しい経営状況となった。このほかに単発で請け負う造園業の収入で補てんし、生計を立てている。
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