数学できる子・できない子を生む算数教育の盲点 テクニックではなく、理解を促す3つのヒント
実は、縦書き掛け算(筆算)の理解でも同じことがいえる。2桁同士の縦書き掛け算の途中の掛け算では、下から繰り上がってきた数を加えるだけの操作から成り立っている。一方、3桁同士の縦書き掛け算の途中の掛け算では、下から繰り上がってきた数を加えることと、さらに上の位に数を加えることの両方の操作が必要となる。
だからこそ、諸外国の教育ばかりでなく、戦前・戦後と続いてきた日本の算数教育でも、3桁同士の掛け算を必ず指導してきた。それが「ゆとり教育」の学習指導要領では、「2桁同士の掛け算を学べば、3桁同士のそれも理解できる」などという無責任な発言をもとにして、算数の縦書き掛け算の指導は2桁同士だけになってしまった。
3つの数で学ぶ重要性
国立教育政策研究所が2006年7月、延べ3万7000人の調査結果を公表し、小4と小5で2桁同士の掛け算では正答率が8割超であったものが、2桁×3桁の掛け算では正答率が5割台に急落したことなどを発表した。そのような結果を踏まえて、現在では見直されてきた。
次に、左右や前後の関係に注目して定義するものはいろいろあるが、二人三脚、三段論法などのように、多くは3つによって定義されるものがほとんどである。算数で学ぶ四則混合計算での重要な規則の1つである「計算は原則として前から行うが、掛け算(×)や割り算(÷)は、足し算(+)や引き算(-)より優先する」を指導する場合も、3つの数で学ぶ必要がある。
たとえば、「3+2×4」という計算では最初に2×4を行って、それに3を加えるのである。ところが「ゆとり教育」が導入されてしばらくの間、「2+3」や「2×3」のような2つの数の計算ばかり熱心に行われた時期があった。
それも影響してか、「3+2×4」のような3つの数の四則混合計算を間違える生徒が、高学年になるほど増えるという珍現象が表面化した(国立教育政策研究所が2006年7月に発表した調査結果を参照)。現在でこそ見直されてきたが、3つの数による四則混合計算を大切にしたい。
結合法則や分配法則ばかりでなく、数学で学ぶ指数法則をはじめ多くの公式についても同じことがいえる。
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