数学できる子・できない子を生む算数教育の盲点 テクニックではなく、理解を促す3つのヒント
1950年にノーベル文学賞を受賞したバートランド・ラッセルの言葉に、「ひとつがいのキジも2日も、ともに2という数の実例であることを発見するには長い年月を要したのである」というものがある。これは、個々の物品にはよらない整数の概念が確立するまでには長い年月を要したことを意味している。
それだけに人類は、イチ、ニ、サン、シ、ゴ、……と1つずつ素朴に数えることを大切にすべきだ。しかし、最近の高校生や大学生を見ていると疑問に感じることがある。それは、1つずつ数える問題を見たとたん「順列記号Pや組み合わせ記号Cを使って計算しなくてはならない」という変な意識をもってしまうのだ。
有名大学の入試問題にも、まれに小学生でも解けるような素朴に数える問題が出題されるが、おしなべて似た状況になるようだ。
このことに筆者は危機感を覚えている。PやCで数えられる対象は限られているのであり、路線図における道順の総数を数えるような素朴な問題ならば、「樹形図」を用いて数えればよい。無理にPやCを用いて解こうとすると、とんでもない間違いをしでかすことが多いのだ。
算数の学びのヒントとは何か
小学生に対する算数指導の現場では前例がある。例えば、「速さ・時間・距離」の計算を最初から「は・じ・き」という公式で教えたり、「比べられる量・元にする量・割合」を最初から「く・も・わ」の公式で計算させることの弊害は、過去の記事でも述べたとおりだ〔「大学生が『%』を分からない日本の絶望的な現実」(2019年4月25日配信)〕。
直近の新学習指導要領から算数に「起こり得る場合の数」が入った現在、PやCに関する公式を使うことだけを教えるような指導ではなく、基本に立ち返ってイチ、ニ、サン、シ、ゴ、……と1つずつ数えることを大切にしたいのである。それが教育の原点であり、数学が得意になる算数の学びのヒントだと筆者は考えている。
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