航空機リースでトップ10を目指す三菱商事《総合商社のポスト資源戦略》
「航空機リースでトップ10を目指す」とブチ上げるのは、安野健二・三菱商事エアラインビジネスユニットマネージャー。
同社の航空機リース事業は資産規模2000億円超、自社で機体を60機持つ。ほかに他社保有分を管理する60機と合わせ、120機で運営している。航空機リースの資産規模では世界15位前後だ。この分野の世界2強は米GE傘下のGECASとAIGグループのILFCで、共に保有約1000機、総資産約5兆円と突出した存在。3位以下は総資産1兆円未満と一回り小さい企業が並ぶ。
現在世界中で稼働する航空機の3分の1がリースだ。湾岸戦争や9・11時を除き、市場は年5%程度で成長してきた。だが足元の経済危機で、航空産業も微妙な舵取りを迫られている。資金繰りが悪化する金融系などから優良資産が市場に出回る可能性がある一方、航空会社が倒産すれば影響は甚大。機体を遊ばせれば駐機料や償却が重荷になるばかり。貸し先の確保が生命線を握る。
実際、三菱商事も2008年9月に経営破綻した英エクセル航空に3機リースしていた。幸い3機とも1カ月以内に転貸先を確保できたため、大きな損失を被らずに済んだ。
リース資産規模の拡大でより高い収益力を目指す
大型機では供給はエアバスとボーイングの2社に限られており、稼働機体数、各航空会社の保有機数が全部見えているビジネスである。リスクはあっても管理しやすい。機種と経過年数ごとの相場もある。だが現実は、どの航空会社がどの機体を必要としているか、情報をつかんでいるか否かで取引価格に差がつく。顧客関係と情報量がものをいう点は総合商社の得意分野ともいえる。
ある程度の資産規模を持つほうが収益を高めやすく、三菱商事も資産拡大を図っている。転売しやすい人気機種は、リスクは低いがリターンも限定される。特殊な機体だと転売リスクは高いが大きなリターンの可能性がある。一定以上のポートフォリオがあれば、ミドルリスク・ミドルリターンの機体も持てる。
「将来は借り手が決まる前に、自社のリスクで一定量の機体を発注することもやっていきたい」と語るのは同社の航空機リース事業を集約したMCアビエーション・パートナーズの佐藤達夫社長。10機、20機とまとめて発注しサプライヤーから値引きを引き出すことで、より高い収益を狙えるからだ。現状の総資産利益率(ROA)は1・5%前後だが、総資産5000億円になれば改善が可能。100億円単位の安定収益基盤が視野に入ってくる。
三菱商事では昨年12月、新規投資する際、原則同額の既存資産を売却する方針を打ち出している。まずは社内での投資資金争奪戦で、初戦を制さなければならない。
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