「教科書が読めない人」は実はこんなにいる 「名門高校生・東大生」でも不安が残る読解力
「意味を理解して読むことができない」という現象が想定外に広がっているのではないか、という疑念が確信に変わったのは、バイトに来ている東大生に頼んで、正答率が低かったRSTの問題を、東大のゼミ仲間に解いてもらった結果を聞いたときです。前著『AI vs.教科書が読めない子どもたち』に出てくる、悪名高き「アミラーゼ問題」に日本人大学院生は全員不正解。唯一正解したのが中国からの留学生だったというのです。
「アミラーゼ問題」とは以下のような問題です。
ところが、日本にも世界にもこのような現象を認識し、分析している研究が存在しない。教科書をどう教えるかについては微に入り細をうがって研究している教育系の学会でも、「教科書を生徒は読めるのか」という問題意識を持っていなかったことには驚かされました。「真剣に読もうと思えば、読めるはず」「読めなかったのはうっかりしただけ」と思い込んで、見過ごしてきたのでしょう。
企業現場での読解力不足はトラブルのもと
加えて企業の中間管理職の方たちからも感想をいただきました。「上からは生産性を上げろと言われるが、現場はメールや仕様書の誤読による予期しないトラブル続きで働き方改革どころじゃない。すると能力の高い人材から転職してしまう。一度そのサイクルに陥ると、なかなか立ち直れない」と言います。
こうした危機感が共有されたのでしょう。前著からわずか1年間で小学6年生から一流企業のホワイトカラーまで14万人がRSTを受検しました。それまでの3年間と合わせると、受検者数はのべ18万人を突破しました。
ただ、RSTは(問題の流出や替え玉受験を防ぐために)基本的には実施機関がパソコン教室などの施設を準備し、機関ごとに受検する方式をとっています。例題を数問公開していますが、全体像がなかなかわからない、というご意見が少なからずありました。
そこで、新著『AIに負けない子どもを育てる』では、RSTの最新の研究成果をお伝えするとともに、RSTを体験していただくコーナーも設けました。ぜひ、挑戦してみてください。「事実について淡々と書かれた短文」を正確に読むことは、実はそう簡単なことではなく、それが読めるかどうかで人生が大きく左右されることを実感することでしょう。
基礎的・汎用的読解力を身に付けて中学校、そして高校を卒業させることこそが、21世紀の公教育が果たすべき役割の「一丁目一番地」だと共感してくださる方が1人でも増えることを切に願っています。
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