「教科書が読めない人」は実はこんなにいる 「名門高校生・東大生」でも不安が残る読解力

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私たちが考案した基礎的・汎用的読解力を測るリーディングスキルテスト(RST)には、「同義文判定」という問題群があります。200字に満たない2つの文の意味が同じか、異なるか、二択で選択します。この能力は記述式問題の答え合わせをするうえで欠かせない能力です。例えば、こんな問題です。

・幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
・1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。
以上の2文は同じ意味でしょうか。

もちろん、答えは「異なる」です。けれども、中学生の正答率は57%にとどまりました。この話を、とある自治体の教育委員会でお話ししたとき、多くの委員が「信じられない」という顔をしました。何かの間違いではないか、成績に関係ないテストだからやる気が出なかったのではないか、コンピュータで受検するという形式に慣れていなかっただけではないか、との質問が出ました。

ところが、私のすぐ後に登壇した現役の高校の国語の先生がこう言ったのです。新井さんの言うことは真実です。実際に定期試験で、先程の例題の2つ目のような解答を持ってきて、「先生、どうしてこれは×なのですか?」と聞きにくる生徒が少なからずいます、と。「意味が違うでしょう」と言うと、「でも、(キーワードとなる語は)全部合ってます。部分点は出ないんですか?」と食い下がるそうです。

解答にさんざん時間をかけても間違える生徒たち

RSTで提示するのは、長文ではなくツイッター程度の短文です。主たる出典は教科書や新聞です。それで「同じ」「異なる」の二択の同義文判定の問題の正答率が3分の2(66%)に届かないような中高校生がかなりの割合でいたのです。

私はうたぐり深い性格です。数千程度のデータで「短文すら読めない中高校生がいる」などとは思いません。やる気がないから適当に答えた生徒が相当数いたのだろう、と当然疑いました。

RSTは他のテストとは異なり、パソコンやタブレットを使って解きます。問題は離れたところにあるサーバーからインターネットを経由して出題されます。ですから、受検者の解答パターンや解答するまでにかかった時間などをモニターすることができるのです。

確かに「数秒以内に解答し、しかも全部①番の選択肢を選び、正答率はランダム並み」という生徒もいました。ですが、その割合は予想をはるかに下回りました。さんざん考えた末に間違えるという生徒のほうが圧倒的多数だったのです。しかも、地域が誇る伝統校――かつては旧帝大に卒業生を送り、その地域の名士や国会議員を輩出したような高校──でも、予想外に成績が悪い。

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