1987年、ベンツに5日間徹底取材して学んだこと 最古の自動車メーカーの原点がそこにあった

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1987年の取材の旅は、メルセデスのクルマ作りの「基本」に「原点」に改めて気づき、再確認するための大いなる学びの機会になった。

体幹を中心にした基本骨格を最重視するクルマ作り、ワーカーが誇りを持ち仕事に集中できる労働環境の追求、安全で快適なクルマ作りのための人間研究……。大きくくくると、こうしたところに、とくに力を注いでいることを、改めて強く気づかされたということだ。

尊敬の念を抱いたメルセデスの取り組み

こうした点への取り組みには多くのメーカーも力を入れている。が、メルセデスの取り組みを現地現場で目の前にし、多くのエンジニアの話しを聞くと、その奥行きの深さには尊敬の念を抱かざるをえなくなる。

人間研究の奥深さがメルセデス車に大きなプラスをもたらしているのは「知る人ぞ知る」だが、例えば、メルセデスのドライビングシミュレーターが追う最大の目標も、人間を知ることによる安全性と快適性の追求にある。

ドライビングシミュレーターは、実際の路上では不可能なテストができる。多くの条件下で、多くの人に運転させ、そのデータを蓄積することができる。例えば、酒に酔ったドライバーや、極度に睡眠不足のドライバーを運転させることもできる。

一般路面では、正確に同一条件を保って多くのデータを取ることは不可能だが、ドライビングシミュレーターならそれもできる。

メルセデスのドライビングシミュレーターには3度乗ったが、その都度中身は大きく進化し、より高度で複雑な走行シーンの再現ができるようになっていた。

初めにも話したが、朝8時から夜10時までの取材は5日間続いた。毎日、移動し、多くを見学し、多くの(5〜6人か)人たちと話した。

しかし、疲れは感じなかった。逆に、タイトでハードな取材が楽しくて仕方がなかった。

ディナーの後のディスカッションが深夜にまで及んだこともあった。でも、疲れるどころか「ああ、これがメルセデスの姿なんだ!!」と、感動してしまったものだ。

この取材結果は新潮社で単行本になったが、1冊ではとても語りきれないほど多くを学んだ。メルセデスの神髄に深く触れた5日間だった。

(文:岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト)

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