中学、高校といわゆる普通学級に進み、「(ADHDは)誤診なんじゃないかと思うこともありました。健常者と変わりなく生きてきて、これからもそうなんだと、思っていました」。
漠然と予想していた未来が一変したのは、短大生時代。文化祭の実行委員の1人として看板や舞台の設営を任されたが、「なに1つ、まともにできなかった」のだという。
予算の見積もりや、日程の調整、必要な人員の配置など、複数の作業を同時に計画して進めることができなかった。最後は周りが助けてくれたものの、「このとき、自分はやっぱり障害者なんだと気づかされました。でも、なかなか障害者として生きていく決心がつかなくて……。絶望しかありませんでした」。
悩んだ末、仕事は障害者枠で探すことに。ハローワークを通し、不動産業などを手がける大手企業の特例子会社に就職した。特例子会社とは、親会社が障害者雇用を目的に設立する子会社のことで、そこでの障害者雇用者数を企業グループ全体の法定雇用分として合算することが認められている。
正社員と契約社員の間の見えない壁
本当は正社員として働きたかったが、かなわなかった。職場の半数は障害者で、さらに、出勤してみてわかったのは、障害者枠で採用された正社員は、そのほとんどが身体障害者だということ。身体障害者は、自分のような発達障害や知的、精神障害者に比べ、複雑な業務も正確、迅速にこなせるからではないかと、リョウジさんは言う。
仕事はアンケート結果の入力や紙書類の電子化。部署によっては敷地内の草むしりなどもする。リョウジさんの上司は車いすを利用する身体障害者で、正社員だ。別の部署の契約社員からは、上司の愚痴を聞かされることもあるが、自身の部署では、そうしたストレスはないという。リョウジさんはネット掲示板に、職場の風景をこう書き込んだ。
健常者の正社員と、障害者の正社員と、障害者の契約社員――。同じ職場内でも、そこにはあからさまな階層がある。見えない壁を前に、リョウジさんの書き込みは続く。
ADHDのリョウジさんは集中力が続かないうえ、同じ作業の繰り返しは苦痛でもある。仕事を辞めるよりはと、「無理に集中するのではなく、あえてとりとめのない思考に身を任せながら入力する感じ」という独自の心構えで、何とかしのいでいるが、正直、ミスは多いという。再び、リョウジさんの心情を掲示板から拾ってみよう。
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