ELTいっくんが「仕事で平均を目指す」深いワケ

だから髪を切り、ヘビーメタルとお別れした

もっとも、今はメタルやパンクやラップといったアグレッシブな音楽ジャンルも、1つのファッションとして受け入れられるようになってきている。居酒屋やコンビニのお兄さんでもときどき、すごい頭の人がいる。その辺の垣根は低くなってきているのかもしれない。でも80年代はそうじゃなかった。だから僕は、「音楽をやっていく」兼「生活していける」ことが双方成り立つ道は何だろう、と真剣に考えるようになった。

その答えが、「たくさんの人が聴いてくれる音楽」をやることだった。そして、ハタチの僕は髪を切り、ヘビーメタルとお別れをした。

いちばん愛してきたジャンルからは離れることになったけれど、今もこうして、音楽の世界に身を置き続けることはできている。

僕はおそらく、ひたむきに夢を追うタイプではない。もしそのタイプならジャンルを変えることもなかっただろうし、スタジオ店員としてフルタイムに近い働き方もしなかっただろう。

もし夢を追う人が、一切の妥協なく突き進んでお金を得られたら、最高に幸せな人生なんだろうな。仮に貧乏なまま死んだって、夢を貫けたんだから幸せかも。そうは思うが、僕はそういうタイプじゃなかった。周りの状況を見て、ドンピシャじゃなくても大まかには「好き」と言える仕事をして……。その先で、たまたま売れたのだ。

情熱的に、熱狂できるものを追い求めることこそが人生だと語る人たちもいるけれど、「自分は、そういうタイプじゃないんだよな」という人もいる。そういう人は、「大まかには好き」と言えるものに沿って生きていたら、十分ハッピーなんじゃなかろうか。

「好きな仕事」にも、不自由はもれなくついてくる

「自分のしたい音楽にどこまでもこだわる」という選択。もしかするとあったかもしれない。でも理屈で考えると、ちょっと限界がある。音楽ってもともと「お金をとるもの」じゃない。音楽の起源はたぶん、「歌って楽しい、何か鳴らして楽しい」みたいな、めちゃくちゃ原始的なもの。そこにお金のやりとりは生じない。その後、徐々に技術が発展してきてから、音楽を職業にする人が少しずつ出てきたのだと思う。

で、そういう人が対価をもらうには、単に歌って鳴らすだけじゃダメで。すごく上手だったり、ルックスがよかったり、といった付加価値がないといけない。だから職業演奏家は腕を磨いたし、何より、人が「聴きたい」と思うような音楽を提供しようと思ったに違いない。町々を練り歩いて演奏する楽団も、「自分たちの音楽を聴け!」ではなくて、きっと聴衆のリクエストを募ったりしただろう。王様に仕える宮廷音楽家だって、王様のニーズを第一に仕事をしたはず。「私のやりたい音楽を奏でさせていただきますから、聞いていてください」なんていったら3日もたたないうちにクビだ。下手したら処刑。

現代ではそんな極端なことは起こらないが、構図は同じだ。対価を得る以上、何らかの苦痛……とまでは言わないが、不自由が発生するのが当たり前だ。どの職業も全部そうかもしれない。仕事って、人のために何かをして、その代わりにお金をもらうことなのだから。

いろんな考え方の人がいるだろうが、思うに、「好きなことを仕事にした人」も、好きなこと「だけ」やるわけにはいかない。好きな仕事の中には、好きじゃない部分も、もれなくついてくる。

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