ELTいっくんが「仕事で平均を目指す」深いワケ だから髪を切り、ヘビーメタルとお別れした

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いっくんことELT(Every Little Thing)のギタリスト、伊藤一朗氏。そのマイペースさは、仕事への向き合い方にも影響していた。
2019年8月にデビュー23周年を迎えたELT(Every Little Thing)。そのギタリストとして活躍する伊藤一朗氏は、プロデビューが決まった際、「2年で終わる」と冷静に思っていたという。
デビューと同時に思いがけずブレイクするものの、まもなくメンバーの脱退で解散の危機に。それを乗り越え、今やバラエティー番組でもおなじみの人となった伊藤氏。50代になった今、二周りも年下の若者に「伊藤さん、ギター弾けるんですね!」と言われることもあるという。
その肩の力の抜けたマイペースさはどのように醸成されたのか? 格好つけない、気合も入れない、それでも幸せな人生を送れる、ユルくて強い大人のメンタルを初公開。
※本稿は、伊藤一朗『ちょっとずつ、マイペース。』(KADOKAWA)を再編集したものです。
前回記事:ELTいっくんが23年間も芸能界で生き残るワケ

僕が「平均」こそベストと思う理由

ハタチになり、ヘビーメタルからポップスに畑を移して髪を切ったころ、街で配っているあのポケットティッシュを渡された。「普通に渡してもらえるものなんだ!」と驚いた。それまで、「見た目」でいかに避けられていたかがわかった。

考えてみたら無理もない。メタルミュージシャンは皆、派手な長髪に黒ずくめの格好をしていて、その文化の外にいる人からしたら意味もわからず、怖い。本人たちがまた、そういう「人と違う自分」を大事にしている。なにしろ、海に行って日焼けしただけで「チャラチャラしてんじゃねえ」と言われてしまう社会。健康さとか、ポピュラーさとか、娯楽といった「普通のこと」は、この社会では軽蔑されてしまうのだ。

だいたい、ロックをやる人は極端に走る傾向が強い。生活のすべてが「音楽のため」になりがちなのだ。服選びも「ロックやってます風」に見えるようにするし、恋愛でさえ「ロックミュージシャンの彼女風の女性」を求めるようになる。すると、世界はとても狭くなる。自分の世界には、自分好みのものと、その好みを共有できる人だけしかいない場所になる。それは幸せなことかもしれないが、「仕事」を視野に入れると、デメリットも大きい。

音楽を商売にするなら、顧客がいないと何も始まらない。だとしたら、いちばん顧客を多くとることのできる「平均」がベストだ。クセがなくて、とくに音楽好きでない人もなんとなく聞く、みたいな音楽が最も幅広く顧客を得られる。

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