スノーピーク白馬進出の裏に地元の切実なSOS 1泊7万円超の超高級グランピング施設の狙い

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宿泊価格は1泊1人7万~11万円と、富裕層をターゲットにした強気の設定だ。「外国人観光客の中には、1泊20万円近くするホテルに1週間滞在する人もいる。せっかく作るなら、尖った高品質な施設をつくろうと思った」。

室内の様子(筆者撮影)

グランピング施設を運営する、スキー場運営会社の八方尾根開発(白馬村)の吉野孝之・執行役員はこう説明する。雪質の高さが評価され、海外のスキー客が増える中、白馬村にはハイクラスの宿泊施設がまだ少ない。

9月は、目標にする1カ月150組のうち、すでに6割が埋まっており、10月の紅葉シーズンの問い合わせも増えてきた。営業期間は、当面はゴールデンウイークから11月上旬までのグリーンシーズンだが、将来的には通年営業も視野に入れる。

1通のメッセージがきっかけに

長野県北西部に位置する白馬村の人口は8704人(2019年8月1日現在)。1998年の長野五輪で、スキージャンプ・ラージヒルで「日の丸飛行隊」が悲願の金メダルを獲得した、伝説のジャンプ台を有する。

日本中がスキーブームに沸いた1990年代初めは、年間280万人近くのスキー客が訪れたが、現在はその3分の1の100万人弱にとどまる。夏山を楽しむ登山客も足を運ぶが「中高年が多く、若い世代に向けた観光施策が必要」(白馬村観光課)と、官民が連携しながら、年間を通して観光客を呼び込むプロジェクトに乗り出している。

一方、スノーピークは、2017年に地方創生事業を手掛けるコンサルティング会社を設立した。公営施設を民間が運営する「指定管理者」になり、北海道帯広市や高知県越知町など全国でキャンプ場を展開している。アウトドア関連商品を販売する“モノ”だけではなく、キャンプ場ですごす時間や体験を楽しんでもらう“コト”売りにも力を入れる。観光資源がなく、通過点だった町が、キャンプ場の開設でにぎわう成功例も出ている。

スノーピークが白馬に注目したきっかけは、白馬村に住む1人の女性が、同社の山井太社長に送った1通のメッセージだった。メッセージを送ったのは、約10年、白馬村でペンションを経営する藤田直子さん。「白馬にはスキー以外の観光の目玉が必要」と考えていた藤田さんは4年前、長野県内で開かれたベンチャービジネスのイベントに参加した。

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