安易に「人材の流動化」に走る日本企業の末路 日米間の「競争」に隠された巨大な不公平の壁

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このように、優秀な研究者やエンジニアが「手近な果実」ばかりもいでいると、太い幹を持つイノベーションが育たなくなり、社会全体としては先細りしてしまう恐れがあります。

ところで、流動性の高い社会で「手近な果実」をもいでしまう現象が起こるとすれば、日本よりもアメリカの方が深刻な悪影響が出るはずです。

実際、アメリカでは、最近のイノベーションの多くが、近視眼的な意思決定の結果、手近な果実を摘み取って生み出されたものばかりだという懸念が多く出されています。

例えば、ノースウエスタン大学のロバート・ゴードン氏は、これまでの歴史を振り返ると、電気、内燃機関、そして屋内配管の3つが社会全体の生産性の向上に極めて重要な役割を担っていたと指摘しています。

アメリカを支える「DARPA」の存在

これらはどれもジェネラル・パーパス・テクノロジーと呼ばれる汎用性の極めて高い技術です。そのような技術は、さまざまな産業で広く生産性の向上に寄与しうるため、経済全体に与えるインパクトは大きいのです。社会がそのような基幹的な技術を継続的に生み出していけるかは、長期的な経済成長の実現にとって非常に重要です。

ゴードン氏は、1970年以降、このような汎用性の高い技術はアメリカでは生み出されていないと指摘し、今後の経済成長についてやや懐疑的な見方を示しています。ジョージ・メイソン大学のタイラー・コーエン氏も、アメリカは「過去30年以上にわたり、手近な果実をもいで暮らしてきたということだ」と指摘しています。

しかし、アメリカはインターネットや人工知能、あるいは原子時計やそれを応用したGPSなど多くのイノベーションを生み出しています。「手近な果実」問題を、それほど心配する必要はないだろうと思う人もいるかもしれません。

ただ、それらのイノベーションがどこから生まれてきたのかを考える必要があります。実は、これらは民間企業の力だけで生み出されたものではありません。アメリカの国防高等研究計画局(一般的にはDARPAと呼ばれています)の研究費が重要な役割を担っていたのです。

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