安易に「人材の流動化」に走る日本企業の末路

日米間の「競争」に隠された巨大な不公平の壁

人材の流動性の高めることは、イノベーションにとって本当にいいことなのでしょうか?(写真:metamorworks/iStock)
経営学者の清水洋氏は、アメリカ・イギリス・オランダ・日本の名門大学で研究を重ねたイノベーション研究のトップランナー。「インターネットから人工知能まで、アメリカ発のイノベーションが圧倒しているのはなぜか」「日本企業は、本当にアメリカ企業より劣っているのか」――清水氏の新著『野生化するイノベーション』から、一部抜粋し再構成のうえ日米間の格差の真相に迫ります。

敗因は「人材の流動性」なのか

アメリカ発のイノベーションが、日本よりも多いことは否めません。例えば、『人類の歴史を変えた発明1001』『世界の発明発見歴史百科』『1000の発明・発見図鑑』の3冊にリストアップされた404個のイノベーションの内訳を見ると、アメリカが279個と圧倒的1位で、次点のイギリスが53個、日本は24個で第3位となっています(ちなみにドイツは12個、フランスは7個)。

日本がアメリカに大きく後れを取っている原因の1つとして、近年の経営学で盛んに指摘されているのが、日本の「人材の流動性」が低いことです。日本では1つの企業でずっと働き続ける人が多く、多様性も少ない。会社のビジネスが陳腐化したとしても、なかなか清算できない。自社の既存ビジネスの強みを破壊するようなラディカルなイノベーションに挑戦する人が少ない、などの指摘が繰り返されてきました。

では、日本の流動性はどの程度低かったのでしょうか。国際的な研究グループが、研究開発の人材のマネジメントやキャリアなどについて行った比較研究によれば、転職経験者の割合はドイツ42.7%、アメリカ38.2%、イギリス34.7%となっているのに対して、日本はわずか5.8%でした 。日本ではほとんどの人材が転職をせず、とくにいわゆる大企業に勤める人材の流動性は低かったのです。

次ページ人材の流動化を促進する改革をしてきたが…
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