ポスト安倍最有力「菅首相」に問われる資質 「影の総理」菅義偉とは何者なのか(下)
一方の麻生だが、先述のように地元の福岡県知事選では菅に完敗し、中央でも昨年の財務次官のセクハラ問題や今年の「老後2000万円問題」への対応で批判を浴びるなど、ここ数年精彩を欠いている。
菅に足元を脅かされる麻生だが、菅に反撃した形跡はあまりみられない。ただ、2017年の内閣改造の際、安倍に対して官房長官の交代を強く進言したことはあった。また、2017年10月の衆院選直前に公明党の参院議員と衆院議員に相次いで女性スキャンダルが発覚し、公明党が大打撃を受けた裏にも麻生の影がちらついた。
「ポスト安倍」政局で麻生派は草刈り場に
2人のうち参院議員は、創価学会副会長の佐藤浩の直系議員。前述したようにその佐藤は学会における菅とのパイプ役だ。これについて、ある公明党幹部は当時、「麻生さん周辺が、菅―佐藤ラインに打撃を与えるために週刊誌に情報を流したと聞いた。菅さんと麻生さんの権力闘争に巻き込まれて本当に迷惑だ」と漏らした。
麻生の足元が揺らいでいるのは、菅のせいだけではない。今も朝のウォーキングを欠かさず、夜は遅くまでホテルオークラのバーで番記者らを相手にする姿は、まもなく79歳になる老人にはとても見えない若々しさだ。だが、年齢からくる判断力の衰えは隠しようもなく、派閥の後継者不在により、「ポスト安倍」政局では各陣営の草刈り場になりかねないことも頭痛の種だ。
麻生の妻は、元首相・故鈴木善幸の3女。その妻から麻生は「早く息子に交代してほしい」と迫られているが、一代で大派閥に育てた麻生派を維持するために、少なくとも次期衆院選には立候補する考えと言われる。もはや自らの再登板に党内の支持が得られる状況にない中で、「ポスト安倍」政権下でも自らの影響力を維持するために次は誰を担ぐべきか。有力な選択肢として考えていた岸田が今回の参院選で大きく失速したこともあって、麻生の悩みは深い。
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