ポスト安倍最有力「菅首相」に問われる資質 「影の総理」菅義偉とは何者なのか(下)

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菅の工作は、自民党内にとどまらない。定数2の静岡選挙区では、国民民主党の現職・榛葉賀津也と立憲民主党の新人が2位争いを繰り広げたが、最後は榛葉が滑り込んだ。

決定打は、裾野が広い自動車会社のドンであり、影響力が極めて大きいスズキの会長・鈴木修が榛葉支援を打ち出したことだったが、これも菅が鈴木に頼んだと言われる。憲法改正論議に国民民主党を引き込む戦略の一環だったと言われるが、それだけではない。一時は落選かと言われた現職を助けてもらったことで、国民民主党は今後、国会対策などで菅の意向を無視できなくなる。

党首の玉木雄一郎が選挙後、ネット番組で「私は生まれ変わった」としたうえで「憲法改正の議論を進めていくし、首相にもぶつける」と述べて波紋を呼んだが、菅への「返礼」と考えればわかりやすい。

維新への影響力を一層強める菅

さらに菅は、東京選挙区でも元都議で維新の新人・音喜多駿を当選させるために水面下で動いたといわれる。選挙関係者の間では、公示前の世論調査で当選圏外だった音喜多が選挙戦に入って急浮上したため、「組織票が動いたのではないか」とささやかれていた。

政府関係者によれば、菅が自民党支持の有力な宗教団体に音喜多の支援を依頼したという。結果的に自民党は東京で何とか2議席を確保したが、音喜多が浮上したことによって現職の武見敬三は最下位での当選となった。武見は麻生派の所属だから、武見を落としてでも維新の音喜多を当選させるのが菅の作戦だったのかもしれない。

同様の現象は神奈川選挙区でも見られた。維新の松沢成文が選挙戦終盤になって浮上し、最後の4議席目に滑り込んだが、その松沢にも菅は水面下で企業票を回して支援したと言われている。

菅は維新代表の松井一郎と極めて親しい。その維新は国会でほかの野党とは一線を画し、多くの野党が反対する法案でも賛成することが少なくない。憲法改正を掲げていることも政権にとっては都合のいい存在だ。維新は、安倍政権にとって国会における野党分断カードになり、同時に憲法改正など右寄りの政策ではつねにブレーキ役となる公明党を牽制するカードにもなるのだ。

今回の参院選で維新が初めて関西以外で当選させた2人に多大な恩を売ったことで、菅は維新に対する影響力を一層強めることになる。これが菅にとって大きな力の源泉となることは言うまでもない。

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