ポスト安倍最有力「菅首相」に問われる資質 「影の総理」菅義偉とは何者なのか(下)
仮に「菅政権」が誕生し、麻生派が主要ポストから外される事態になれば、有力な総裁候補を持たない麻生派は一気に求心力を失う。そうでなくても、外相の河野が麻生の説得を振り切って菅の後押しで総裁選に出馬すれば、その時点で麻生派が分裂することにもなりかねない。
こうした状況を受け、麻生は最近、周辺に「菅と俺とを本気でけんかさせようとするやつもいるが、そんなことにはならねえよ」と話しているという。とりあえず今は劣勢とみて「休戦しよう」ということか。
麻生は同時に、最近は周辺に「(ポスト安倍候補には)加藤勝信(総務会長)もいるじゃないか」とも漏らす。
竹下派所属ながら安倍側近として第2次内閣発足後、一貫して安倍から重要ポストを与えられている加藤であれば、細田派(安倍派)と連携して総裁に押し上げることができるかもしれない。何より加藤自身が麻生の下を足しげく訪れるなど関係は良好だ。麻生としては加藤カードを持つことで「菅首相」に安倍が加担することも牽制できる。
事実上の「菅派」は無派閥議員の半数近くに
官房長官として歴代最長記録を更新し続け、その権力を最大限に使ってライバルたちの力を削ぎ、影響力の拡大を図る菅。新元号「令和」の発表で国民的人気まで獲得したことで、最有力の「ポスト安倍」候補と目されるようになった。
しかも、無派閥の若手議員らによる「ガネーシャの会」や今春新たに発足した無派閥の中堅議員らによる「令和の会」など、無派閥議員を中心とした菅を囲むグループは4つもある。本人も無派閥だが、70人余の無派閥議員のうち30人以上が事実上の「菅派」と言われる。
菅自身は、首相を目指すのかと問われれば、最近もこれまでどおり「まったく考えていない」と繰り返す。だが、仮に菅が「ポスト安倍」の自民党総裁選に立候補する意向を固めた場合、果たして安倍は、長期政権の最大の功労者である菅を見捨てて岸田ら他の候補を支援することなどできるのか。
菅は党内第5派閥を率いる幹事長・二階俊博と良好な関係を築いており、菅が立候補の意向を固めれば、総裁候補を持たない細田派(=安倍派)と二階派、それに無派閥の菅グループ30~40人程度が支援する体制があっという間に出来上がる可能性がある。
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