中国側交渉団に鐘山商務相がかかわることによって、対米交渉の「強硬派」の台頭が明らかになった。トランプ大統領が8月1日に中国からの輸入品3000億ドル(約32兆円)相当に10%の追加関税を課すことに踏み切ったのは、そういう中国側の強硬な交渉姿勢を見抜いたからだ。
トランプ大統領は、今回の追加関税の決定を中国側に伝えるのを、アメリカ側の実務責任者であるロバート・ライトハイザーアメリカ通商代表(USTR)代表に頼んだ。それは中国時間の深夜1時だった。
真夜中の電話連絡は、トランプ大統領の習近平氏に対する、友人としての思いやりである。仮に、米中交渉の権限が劉鶴副首相から鐘山商務相に移りかかっているとしても、そのメッセージには習近平氏の幼なじみである劉鶴氏への気配りが込められている。
中国側が今後、交渉中断を示唆してきたとしても意に介さず、トランプ氏は従来の主張を貫く姿勢を明言している。それと同時に、習近平氏との間にある「英雄、英雄を知る」という絆に変わりがないことを示唆している。
トランプは北朝鮮のミサイル発射を非難しない
さて、さらに予測不可能な「トランプ外交」として、アメリカメディアのターゲットになりやすいのは、北朝鮮問題である。
8月10日、北朝鮮は日本海に向けて飛翔体2発を発射した。5月から短距離弾道ミサイルの発射を重ねているが、一連のミサイル発射は米韓合同軍事演習に対する抗議であり、トランプ大統領もそのことを承知している。
トランプ大統領はむしろ、北朝鮮のミサイル発射を非難しない姿勢を示している。6月末の板門店での電撃会談も含め、トランプ大統領は金正恩北朝鮮労働党委員長との信頼関係を積み重ねてきており、そのことを金正恩委員長も十分に理解しているとトランプ大統領は確信しているのだろう。
トランプ大統領と金正恩委員長との個人的な関係がなければ、北朝鮮は軍事的なリスクを無制限に拡大する危険な賭けを続けていただろう。それが影を潜めているのは、この2人の信頼関係によるところが大きい。
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