なぜなら、ケリー長官主導のイラン核合意には、イランの核保有への道を、数年ごとに順次進め、核保有を実務的に拡大する条項がいくつも盛り込まれているからだ。つまり、イランの近未来の核保有を、まるで許容しているかのような国際契約とみなされかねない。
このイラン問題でのアメリカメディアの自己矛盾を的確に指摘したのは、「親トランプ」として知られるフォックス・ニュースTVの著名キャスター、タッカー・カールソン氏だ。
ドローン1機と150人のイラン兵の命
トランプ大統領は6月20日、「ドローン1機と引き換えに、150人のイラン兵の死をもたらす開戦は、バランスが取れない」として、対イラン軍事攻撃を取りやめた。
その決定に対して、CNNテレビは「イランによる米ドローン機撃墜の報復として、対イラン軍事攻撃をトランプ大統領自身が決断したくせに、いざとなったら実行することさえできない」という、オバマ政権の元・安全保障問題スタッフ(現・CNN安全保障問題アナリスト)による批判を放映した。
翌6月21日、カールソン氏はその報道を引用し、むやみに人命を軽んじるべきではないと、CNNを叱責した。カールソン氏の立ち位置はまさに正論であり、イラン問題をめぐる「アメリカメディアの良心」と言える。
CNNが今日のようなビジネス上の成功を収めるに至ったきっかけは、1991年にイラク空爆で始まった湾岸戦争の報道だったことは、アメリカメディア界の常識となっている。
次に、トランプ外交の予測不可能性の例としてよく取り上げられる、対中国貿易交渉について、トランプ大統領の本音を解き明かそう。
7月31日、上海で開かれた米中貿易交渉の中国側代表は従来どおり劉鶴副首相だったが、中国共産党の立場に近い鐘山商務相も加わった。鍾山商務相を中国チームの中軸に据えた意味は何か。習近平国家主席は、陰の主役というべき中国共産党との調整が最も難しいと判断したからだろう。
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