世界を振り回す「トランプ外交」を読み解くカギ 各国に対する大統領の本音はどこにあるのか

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前述の対中国追加関税が発表された8月1日の翌日、トランプ大統領は、ホワイトハウスに牛肉業界関係者を招き、アメリカ産ビーフの対EU輸出拡大を正式発表した。これは政治的に大きな意味を持つ。アメリカ産ビーフは「アメリカ・ファースト」の象徴の1つだからだ。

今後1年以内に、アメリカ産ビーフの対EUへの輸出額は46%増加するという。これは、まさにビッグニュースである。2020年の大統領選に向けて、トランプ大統領の追い風となることは間違いない。

アメリカメディアは、トランプ大統領の対中国追加関税を、トランプ外交の「予測不可能性」からのみ論じがちだが、トランプ大統領は、EUのアメリカに対する農業市場開放と、中国のアメリカ農産物に対する閉鎖性を見事に対比して見せている。「トランプ外交」の舞台裏には、緻密な論理性が存在することも見落とすべきではない。

日本の農業市場開放は2020年再選テーマの1つ

トランプ大統領にとって、日本の農業市場開放は2020年再選のテーマの1つであり、その交渉は「日本の参議院選挙が終わるまで待つ」とされてきた。いまや待ったなしの状況だが、農産物の対日輸出拡大のほかに、ホルムズ海峡での民間船舶の航行安全を確保するための有志連合計画がある。

7月9日、首都ワシントンで、アメリカのジョー・ダンフォード統合参謀本部議長は、日本を含む関係各国に対して有志連合計画を説明した。

ホルムズ海峡をめぐる有志連合については、ジョン・ボルトン大統領補佐官も日本に強く要請しているが、以前から、トランプ大統領自身のリーダーシップで、日本に対して協力要請がなされていた。すでにアメリカ軍中枢によって計画が着々と進められている。

日本としては、その計画に沿って知恵を絞ることになろう。日本には平和憲法があり、その枠組の中で日本のタンカーの安全運航を図る必要がある。それはアメリカとイランの開戦を防ぐことにもなりうる。経済的にも大きな価値がある。

日本としては今後もトランプ外交に振り回されず、トランプ大統領の本音をしっかり読み解いていく必要があるだろう。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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