「がん検診」現役医師が教えるデメリットの数々 「不十分なエビデンス」に基づいた検診の弊害
しかしながら、これらの検査はすべて研究段階です。がんを発見することはできても、まだ「リキッドバイオプシーを利用したがん検診」が「がん死」を減らしたことを証明したという臨床試験はありません。将来に期待です。
検査によって利益が得られるというエビデンスはないのに、リキッドバイオプシーを用いたがん検診を提供している医療機関もあります。保険適応はありませんので自費です。腫瘍マーカー検査よりも高価で数万円ほどかかりますが、利益が証明されていないことや偽陽性の害に関する説明はされていません。がん検診には害がないという誤解を利用して、お金儲けをしているように見えます。公的機関が行っている進行中の研究に協力するならともかく、ビジネス目的の医療機関でこうした検査を受けることはおすすめしません。
さらに複数の臓器のがんを1回の検査で発見できると称するリキッドバイオプシーには、偽陽性のときに際限なく検査を行われかねないという欠点もあります。さまざまな臓器のがんを発見できる点が長所だとしても、これは欠点にもなりうるのです。
「偽陽性の割合」は想像以上に高い
さて、ここで問題です。どの臓器だろうと、今後1年以内に発症するがんをすべて発見できる検査があるとしましょう。がんではない人を誤って陽性としてしまう確率は5%とします。60歳前後の日本人のがんの罹患率はだいたい10万人当たり1000人です。60歳前後の日本人が、この検査によるがん検診を受けた場合、陽性と判定された中での偽陽性の割合はどれくらいでしょうか。5%じゃありませんよ。
仮に10万人が検査を受けると、本当にがんである1000人に加えて、がんでない9万9000人のうちの5%で、4950人が検査で陽性となります。検査で陽性と判定される人は、1000+4950=5950人です。つまり、検査で陽性と出た人の中の偽陽性の人の割合は、4950÷5950=約83%ということになります。
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