「がん検診」現役医師が教えるデメリットの数々 「不十分なエビデンス」に基づいた検診の弊害

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多くの方が思っていたよりも、偽陽性の割合はずっと高いのではないでしょうか。どのような検査でも一定の割合で不正確な結果が出ます。がんの人よりもがんではない人が圧倒的に多いので、がん検診で多くの偽陽性が生じるのは仕方がないことです。

それでも公的に推奨されているがん検診では、精密検査は特定の臓器だけを対象に行えばすみます。肺がん検診だと胸部CT、大腸がん検診だと大腸内視鏡検査といった具合に、臓器ごとに精密検査を行えばいいのです。

一方、複数の臓器のがんを発見できる検査で陽性になった場合、全身を調べる必要があります。胸腹部CT、腹部エコー、上部消化管内視鏡、下部消化管内視鏡、女性ならマンモグラフィーに乳腺エコー検査、脳腫瘍を心配するなら頭部CTに頭部MRIも追加し、全身PET検査まで行う人も出てくるかもしれません。

「カネ目当て」の医療機関もある

さまざまながんを一度に発見するような検査は、「がんではない人を正確にがんではないと判定する能力」が極めて高くないと実用的ではありません。

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そして現在のところ、そこまで正確なリキッドバイオプシーは存在しません。偽陽性が多く、検査がたくさん必要になると、検査を行う医療機関にとっては金銭的な利益になるということも指摘しておきます。

ただし、誤解してほしくないのですが、がん検診がすべてダメだと言っているわけではありません。利益が害を上まわるがん検診もあります。やみくもに検診を受けるのではなく、利益と害について理解したうえで、有効な検診を選んで受けましょう。

また、検診はあくまでも症状がない人が受けるものです。がんを疑うような症状がある場合は、早めに病院を受診してください。

名取 宏 内科医

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なとり ひろむ / Hiromu Natori

大学病院勤務、大学院を経て、現在は市中病院に勤務。診療の傍ら、主にインターネット上で「科学」と「ニセ科学」についての情報を発信している。著書に『新装版 「ニセ医学」に騙されないために』(内外出版社)がある。BLOG:NATROMのブログ

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