「がん検診」現役医師が教えるデメリットの数々 「不十分なエビデンス」に基づいた検診の弊害
日本人の死因のトップは悪性新生物、いわゆる「がん」です。ですから、健康で長生きするには、症状のない早期のうちに発見するため、なるべく多くのがん検診を受けたほうがいいと考える人もいるでしょう。ところが、がん検診もさまざまで、確かにがん死を減らすことが証明されているがん検診はあるものの、中には利益が明確でないものもあります。
がん検診は「無害」ではない
それでも、「検診を受けるだけなら何も害はない。少なくとも損はしないのだから、たくさん受けたほうがいい」と思うかもしれません。しかし、「検診には害がない」という考えは間違っています。薬やワクチンに害(副作用)があることはよく知られていますが、検診の害についてはあまり知られていません。医師でもよくわかっていない人もいます。
医師などの専門職向けに書かれた検診の教科書の序文には、「すべての検診には害がある」とあります(※1 Angela E. Raffle and J. A. Muir Gray著,Screening: Evidence and Practice, Oxford University Press)。
これまで、また現在も不十分なエビデンスに基づいた検診が行われ、結果として検診が害をもたらしていることに注意を促すためです。序文はこう続きます。「いくつかの検診は利益もあり、その中には妥当な費用で実施でき、害よりも利益が上まわるものもある」。検診を受けるなら、害だけがある検診を避け、利益が害に勝るものを選んだほうがいいでしょう。
がん検診の害には、さまざまなものがあります。最もわかりやすい害は、「偽陽性(ぎようせい)」でしょう。がん検診の1次検査では、がんの疑いのある人を広く拾い上げ、精密検査で確定診断をします。この1次検査の結果、がんが疑われて精密検査を受けたけれど、最終的にはがんではなかった場合を偽陽性といいます。
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