「ディープインパクト」が日本競馬に残した衝撃 17歳で急逝、時代を駆け抜けた最強馬の足跡

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だが、ディープインパクトは違った。2000年代に入り、時代に閉塞感が漂っていた。ファンは有無を言わさぬ強さを持つものにあこがれた。武豊騎手が「英雄」と呼んだが、時代がそんな存在を欲していた。その意味で3頭は時代を映し出す鏡のような存在で、ディープインパクトは平成という時代を象徴する馬だった。平成が終わり、令和に入ってすぐに旅立ったというのも感慨深い。

すごさは競走馬としてだけではない。過去、シンザン、ミスターシービー、シンボリルドルフといった三冠馬は種牡馬としても超一流馬を送り出したものの、スーパーサイアーではなかった。ディープインパクトは種牡馬としても王者だった。そこが過去の三冠馬と決定的に違うところだ。そして、頂点のままこの世を去った。種牡馬として初年度産駒からマルセリーナが桜花賞を制覇。

2012年から7年連続でリーディングサイアーとなり今年も首位を快走する。父のサンデーサイレンスの13年連続には及ばないが、残された産駒で記録は続きそうだ。2012年にはジェンティルドンナが牝馬三冠を制し、2014年に引退するまでに国内外でGⅠ7勝を挙げた。ダービー馬は2012年ディープブリランテ、2013年キズナ、2016年マカヒキ、2018年ワグネリアン、2019年ロジャーバローズと5頭送り出し、父サンデーサイレンスの6頭に迫っている。

種付け料は最高4000万円まで高騰

種付け料は1000万円前後からスタートして昨年から世界最高レベルの4000万円になった。8月4日終了現在で産駒はJRA通算1947勝でサンデーサイレンスの2749勝に次ぐ2位。産駒はJRA平地GⅠ50勝、JGⅠ1勝。それだけではない。2012年のフランス2000ギニーをビューティーパーラーが制覇。2018年にはサクソンウォリアーが無敗でイギリス2000ギニーを制し、スタディオブマンがフランスダービーを制覇。日本のダービー馬ワグネリアンと合わせて産駒が同一年3カ国クラシック制覇を果たした。

世界からディープインパクトの血を求めて繁殖牝馬がやってきた。日本産の種牡馬として初めて世界からその価値を認められた種牡馬だった。ディープインパクトは産駒に自身同様の爆発的なスピードと瞬発力を伝えた。

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