「ディープインパクト」が日本競馬に残した衝撃

17歳で急逝、時代を駆け抜けた最強馬の足跡

ディープインパクトの突然の死は関係者に衝撃を与えた。14戦すべてで手綱を取った武豊騎手は奇しくも北海道に滞在中だった。29日にディープインパクトの生命の危機を知らされたという。「行ける状態ですか?」とたずねたが面会できる容体ではなく断念するしかなかった。「何とか頑張ってほしいというか祈るような気持ちで、元気になれば会いに行こうと思っていた」。

その願いはかなわなかった。30日朝に訃報を聞いて帰路の飛行機をキャンセルして社台スタリオンステーションに向かった。すでに遺体は解剖されており最後の対面もかなわなかった。誰もいなくなった馬房で静かに手を合わせたという。

英雄だったと思う

31日に栗東トレーニングセンターで記者会見した。「ボクにとってヒーローみたいな馬。言葉で表すのはすごく難しい。いろいろなレース、いろいろな思い出をあらためて思いだした。出会えて良かった。ともに過ごした時間は幸せだった。感謝しかない。ありがとうと言いたい」。言葉を選びながら、ひとつひとつ言葉を紡いだ。

印象を聞かれて「英雄だったと思う。現役を引退した時も絶頂期でターフを去って、種牡馬としても最強のまま突然の終わり。現役を引退した時に似ている」と語った。

「思い出のレースを選ぶのは難しいが、一番ディープらしい走りだったのは最後の有馬記念。2年間やってきてやっと手の内に入れたという思いもあった」とベストレースを挙げた。

「後悔は?」との質問に「あります」と。凱旋門賞を勝てなかったことは悔いとして残っている。「当時世界一強かったと思っていたし、勝たなければいけないと思っていた。あらためてというよりずっと思っていたことだけど、取れなかったのは大きな悔しさとして残っている」と振り返る。

「種牡馬としても日本の、日本だけでなく競馬を変えたと思う。素晴らしかった。まだたくさんの子供が残されているし、彼の遺伝子が受け継がれていく。できれば彼の子供で凱旋門賞を勝ちたい」と天国の最高のパートナーに誓った。

現役時代にディープインパクトを管理した池江泰郎元調教師は「驚きとショックで頭の中が混乱している。まだ17歳。もっと長生きしてほしかった」と声を詰まらせた。「一生の宝物。現役時代に預かることができたのも神様からのプレゼントだった。調教師として最高のレース(ダービー)を勝たせてくれた。勝てなかった凱旋門賞を産駒が勝ってほしい。安らかに眠ってほしい」と冥福を祈った。

オーナーの金子真人氏は無敗の三冠や凱旋門賞敗戦後にジャパンカップと有馬記念を連勝したことを思い出に挙げながら「種牡馬としてもマカヒキとワグネリアンの2頭のダービー馬をプレゼントしてくれた。突然の訃報に涙が止まりません」とコメントした。生産者の吉田勝已ノーザンファーム代表は「過去の生産馬の中でも間違いなく最高の競走馬だった。種牡馬としても大成功していただけに本当に残念」と語った。そのほか各方面からさまざまなコメントがSNSを通じて寄せられた。それだけディープインパクトは多くの人を魅了した。

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