ダイハツ「新型タント」はN-BOXに勝てるのか 7月から発売、販売台数で首位奪還を目指す

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ダイハツの「Light you up」というコーポレートスローガンは、いかにもダイハツらしい愚直な姿勢で人を愛する様子を伝える標語だ。一方でホンダは、「The Power of Dreams」を永年標語に掲げ、原動機がもたらす夢を追求し続ける姿勢を貫く。そこには本田宗一郎の人間尊重の精神も含まれている。

どちらの標語も、優劣を競うものではない。顧客の嗜好が、より安心を求めるか、夢を求めるかだ。

現状、N-BOXが初代~2代目と連続して高い人気を維持している背景に、暮らしの中のちょっとした夢を追いかけたい人々の期待が現れているのではないか。新型タントと地域密着プロジェクトの活動は、じわじわと浸透していく価値であろう。

ただし、デジタル通信で情報が瞬時にして伝わり、反射的に価値を判断する時代にあって、ややわかりにくい気がしないでもない。一方で、そうした素早い情報や価値の変化に、疲れを覚えはじめている人もあるだろう。

「安心」という言葉の重要性

N-BOXとタントは、そうした現代の2つの側面を体現し、それに対するそれぞれの自動車メーカーの回答であるともいえる。それは、勝ち負けではない。人生の選択肢だ。

新型タントはNーBOXと違う価値で勝負する(撮影:尾形文繁)

もちろん販売の最前線では成績がすべてである。しかし消費者の目線からすれば、そうした選択肢があることが重要になる。そして一人ひとりの生き方に親身になってくれるクルマを愛用したいという気持ちであるはずだ。

少なくとも、時代は少子高齢化と向き合わなければならない。今、N-BOXに乗って夢を追い続けている人も、やがてはその現実に直面する。ほとんどの軽自動車が安全装備を標準化するようになったことも、数年前には考えられないことであった。それほど人々は、安全や安心に大きな価値を見出している。

1年後の成績はどうか。まだ見通すことはできない。しかし、安心という言葉はデジタル時代が進むほどさらに重要性を帯びていくだろう。新型タントのよさは、人生の年を重ねるごとにしみじみと心の底に浸透していくはずだ。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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