ダイハツ「新型タント」はN-BOXに勝てるのか 7月から発売、販売台数で首位奪還を目指す

拡大
縮小

スペーシアはかつて、パレットという車名だった。しかしクルマの価値が伝わりにくいとして、2世代前から広々とした空間を印象付けるスペーシアへ車名変更し、タントに対抗した。

スズキ「スペーシア カスタム」(撮影:尾形文繁)

そして現行車では、家族や仲間とワクワクできるクルマを目指し、外観や内装に道具仕立ての意匠を与えている。

また軽自動車としては唯一スズキが誇るマイルドハイブリッドを搭載した。これにより、静粛性や加速の良さなど、走行性能の上質さは他社を超える存在となっている。それらの改良が、2018年にN-BOXに次ぐ2位の販売台数を獲得し、なおかつ対前年比145%強の伸び率を残したといえるだろう。

高齢者に優しいクルマ

初代から、子育て家族を主体に商品力を高めてきたタントだが、この4代目からより幅広い世代の利用者を視野に開発がなされた。免許証を取得して間もない若者から、従来同様の子育て家族、さらには高齢者へも視野を広げている。

従来価値の拡大という側面では、運転席の前後移動量を大幅に増やし、後席まで届くほど後ろへ下げられるようにした。運転席を大きく後ろへ下げられることにより、ミラクルオープンドアを利用しながら子供と一緒に歩道側からクルマに乗り込み、運転席に着座することができる。

車道側で乗り降りしないで済む点は、交通量の激しい通りではより安全につながり、安心をもたらすだろう。また後席に届くほど後ろへ運転席を移動できるため、後席に座る子供の世話もしやすくなる。

助手席ターンシート仕様の新型タント(撮影:尾形文繁)

そして新たに、福祉車両でなくても、販売店の注文装備扱いで、助手席のドアやスライドドアの開閉に連動して車外へステップが自動展開・収納する機能を取り付けることができる。あるいは、前席背もたれの裏側に、後席のための手すりを販売店注文装備で取り付けることもできる。そのように高齢者の乗り降りもしやすくする装備を、福祉車両以外の車種で装着できるようにしている点が目新しい。

高齢者に対する対応策は、地域密着プロジェクトと呼ばれる活動から生まれている。地域密着プロジェクトとは、国内市場において、少子高齢化/国内市場の縮小/電動化や自動運転化に加え使用から利用へという動向に対処するため、ダイハツ販売店と地域が密着し連携を深めていく取り組みである。

これは産官学民で連携し、地域に合ったクルマとの付き合い方を模索しようというコト(利用や使用)づくりである。その成果が、モノ(新車)づくりにも反映され、新型タントの新たな価値創造につながっている。モノとコトを両輪とした開発や販売店の価値創造は、まだ始まったばかりだ。その成果は、新型タント販売の推移からこの先みえてくるだろう。

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