深田恭子「20年主役を演じる」圧倒的したたかさ カワイイ文化を牽引した「奇跡のアラフォー」

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ロココ時代の美学として、「女の子はか弱ければか弱いほど価値がある。守られるより守るほうが性に合ってる女性なんて最低。酸いも甘いも噛み分けた経験豊富なレディなんて最悪」と、劇中で豪語していた深キョンではあるが、茨城県の下妻というド田舎では奇抜なロリータファッションに身を包み、堂々と生活している。

2004年、映画『下妻物語』の完成会見。主演の深田恭子さん(左)と土屋アンナさん(写真:時事)

か弱く見せる服装でも、ちっとも弱くはない。他者の目を気にせず、好きなモノを追求して何が悪い?という開き直りすらある。

そう、『下妻物語』の深キョンには強い主語があった。共感してくれる友達なぞ求めず、孤高の人でもあった。だからこそ、まったく趣の異なる、ヤンキーのアンナと仲良くなれたのだ。

深キョン世代が背負うもの

『下妻物語』は2004年の映画だが、そのちょっと前に思いをはせてみる。

猫も杓子も恋愛至上主義のトレンディドラマ最盛期はバブル崩壊とともに過ぎ去り、1990年代前半は個の時代に突入。先行き不安の社会情勢で、結婚がゴールではなくなり、家族至上主義も崩壊。女性たちは自分の趣味やライフスタイル、ファッションを男性の好みに合わせることに疑問を覚え始める。

そして1990年代後半は、安室奈美恵の全盛期。街にはアムラーが増え、厚底靴に日焼けした肌のいわゆるコギャルたちが闊歩した。さらに進化したのがガングロのヤマンバギャルたちだ。顔を真っ黒に塗り(あるいは日焼けし)、唇を白く塗り、目元を盛る。男性ウケを一切気にしない、面白い・楽しいからやる。女の子たちが古い世間体にとらわれず、自分たちの価値観をもって流行を作り出した、いい時代だったと思っている。

で、ロリータファッションも心意気としては同じではないか。カワイイ服が好き。変わり者と言われようと、誰になんと言われようと、追求したい美学がある。その急先鋒を担ったのが、実は深キョンだったと思うのだ。

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