今年の3年後定着率100%の企業は103社で前年比5社減となり、3年連続で前年比減となった。平均3年後定着率(82.3%)も2014年調査(86.6%)をピークに減少傾向にある。総務省「労働力調査」によれば、2018年の転職者数は329万人(2015年は299万人)で、リーマンショックがあった2008年以来の高水準だった。こうした環境の変化もあり、新入社員を定着させることは徐々に難しくなってきているのだろう。
3年後定着率100%の企業のうち、2015年の入社人数が最多だったのは製薬企業の塩野義製薬で98人(うち男性57人、女性41人)が入社した。同社は抗生物質に強みを持つ中堅製薬企業だが、2008年にアメリカのサイエル社を買収するなど積極的な世界展開を行っている。抗HIV薬が大型製品に成長するなど、本調査の該当期間(2015~18年)の業績も好調だった。
同社の有価証券報告書によると従業員の平均年収は2015年3月期の836万円から、2018年3月期に919万円まで増加している。高水準の賃金と活躍できるフィールドの広さが若手社員を惹きつけているのかもしれない。
3年後定着率が連続して100%の企業は
今回のランキングでは、2年以上連続して定着率100%だった企業は前年比4社減の31社だった。
最長となったのは、戸上電機製作所、ヒラノテクシード、WOWOW、日清製粉グループ本社で5年連続となった。
全体的に定着率が低下するなか、この4社は3年後定着率100%を維持している。
ランキング表に戻ると、塩野義製薬に引き続き、新入社員が多かったのは合成ゴム大手のJSRで88人(うち男性82人、女性6人)だった。
同社は早くからワーク・ライフ・バランスの実現に取り組んでいる。
1989年にはフレックスタイム制度を導入し、1996年からはコアタイムも廃止したという(同社HPより)。
全社員対象に階層・職能・目的別の体系的な研修制度を整備するなど人材の育成にも積極的で、1人あたり総研修時間も同社HPで公表している。
調査該当期間における大幅な賃金上昇は見られず、安定した財務と長期的な人材施策が新入社員の定着につながっていると考えられる。
続いて定着率100%だったのは、新入社員が多い順に国際石油開発帝石の76人(うち男性60人、女性16人)、ANAホールディングスの54人(うち男性35人、女性19人)、横河電機の52人(うち男性39人、女性13人)であった。
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